ビタミンD誘導体は医薬品として活用されている化合物以外にも数多くの高活性な誘導体が報告されている。しかし重篤な副作用として高カルシウム血症を併発することが問題となる。そこで昨年度に引き続き本研究では、ビタミンD受容体の新規アンタゴニストを創製して、カルシウム作用の分離を目指した誘導体の開発を目指した。さらに、化合物の構造内に共有結合可能な官能基(共有結合モディファイア)を導入する分子設計とした。これにより生理作用の増強、作用持続性の向上を目指した。 1.新規ビタミンD誘導体の合成:共有結合型の新規アンタゴニストの合成を目指し、共有結合モディファイアの予備検討を、モデル基質を用いて昨年度に引き続き実施した。その結果、ビタミンD受容体のリガンド結合ポケット内に存在する標的アミノ酸であるヒスチジン残基と共有結合を形成する嵩高い構造を有する共有結合モディファイアを複数見出し、その反応性を解明する研究を実施した。現在、ビタミンD母骨格を有する誘導体の合成を進めている。 2.ビタミンD受容体タンパク質と合成した化合物の結合様式の解明:これまでに合成できたヘテロ小員環型の共有結合型ビタミンD誘導体とビタミンD受容体リガンド結合領域のタンパク質を用いて、共結晶化を実施した。結晶化条件の再検討を行った結果、良質な結晶を新たに得ることができたため、高エネルギー加速器研究機構のビームラインを用いて、X線回折像を取得した。X結晶構造解析を現在行っており、昨年度よりも高分解能の回折像を得たので、より詳細な構造解析ができると考えている。またさらに良質な共結晶が得られるように、結晶化条件の最適化を検討する。
|