研究課題/領域番号 |
21K15240
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松岡 悠太 九州大学, 薬学研究院, 助教 (20783509)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 脂質過酸化反応 / 質量分析 / アセトアミノフェン |
研究実績の概要 |
生体内リン脂質は、活性酸素種などにより容易に酸化され「酸化リン脂質」は生じる。これら分子種は多彩な生理活性を示すことから、新たな疾患原因物質・バイオマーカー候補分子として、注目されている。一方で、酸化リン脂質は分析に要する構造情報およびデータベースが大きく不足していることから、これまで数種の特定の酸化リン脂質のみが評価の対象とされてきた。そこで本研究では、未知化合物の探索に極めて有用な高分解能質量分析計 (HRMS/MS)によるノンターゲット分析を活用し、酸化脂質の体系的構造解析技術およびデータベース構築を目指す。さらに確立したシステムを応用し、培養細胞・酸化ストレス疾患モデル動物において変動する酸化リン脂質の包括的解析および、それらの生理学的役割について明らかとする。 本年度は、「(目的-1)LC/HRMS/MSによる酸化リン脂質のノンターゲット分析およびデータベース化」を進めた。リン脂質の1種であるホスファチジルコリン (PC)を試験管内にて参加させ、ノンターゲット分析にて網羅的に構造同定することで、計465種の酸化PCからなる構造データベースを構築した。さらに、本データベースをアセトアミノフェン肝障害モデルマウス肝臓組織中酸化PCの解析に応用したところ、計70種の内在性酸化PCの検出に成功した。今後は、対象脂質クラスの拡大および他の疾患モデル動物へも本データベースを応用を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の、本年度設定目標の通り、数百種の酸化リン脂質からなる構造データベースの構築に成功している。さらに、次年度達成目標である、「(目的-3)疾患モデル動物を用いた検証」においても、アセトアミノフェン肝障害モデルマウスにおける酸化リン脂質の網羅的解析を達成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、構築した構造データベースの①更なる拡大、および②他の疾患モデル動物中酸化脂質解析への応用を進める。①のために、PCの他に、ホスファチジルエタノールアミン (PE)、ホスファチジルセリン (PS)、ホスファチジルイノシトール (PI)由来酸化物に対する構造データベースを構築する。②のためには、他の肝疾患および神経変性疾患発症時において生成する酸化脂質分析を実施し、各疾患における役割を明らかとする。
|