研究課題
今年度は、前年度に稼働できなかったMALDI-IR-VUV-MSによる実験スキームの再構築を試み、この実験スキームで正常に測定可能な体制を整えることができた。次に、MALDIレーザー、IRレーザー、VUVレーザー間のレーザー照射タイミングの最適化を試みたが、現状では、IRレーザーを照射の有無で、MALDI-IR、MALDI-IR-VUV信号に大きな変化が見られる条件が見つからず、マトリックスクラスター(Mn)からの試料の脱溶媒和を確認できていない。これは、各レーザー照射タイミングが最適な条件ではない、発生するMnの量が極めて少ない、Mnの存在領域が試料表面から極めて近傍の領域に限られておりMnの多くにIRレーザーが照射できていない可能性などが考えられるが、これらについては、今後も継続して調査する予定である。一方、本研究の最終的な目標であるMALDI検出感度の向上を目指す上では、一連のMALDIイオン生成機構に関する情報、特に試料へのMALDIレーザー照射後に引き起こされる相爆発過程に関する情報等の取得が必要である。このような背景から、本研究では、レーザーの不具合等で構築に遅延が生じたMALDI-IR-VUV-MSの実験スキームの構築を行う一方で、MALDI法で汎用されているマトリックス剤 2,5-dihydroxybenzoic acid(DHB)結晶から生成したプルーム中の中性分子を紫外レーザーポストイオン化法を用いて調査した。その結果、このプルーム中の中性DHB分子の内部エネルギーと熱分解に関する指標となる信号を同時に測定することに成功し、プルーム後方部分がMALDI過程における相爆発を引き起こしていること等が示唆された。なお、これらの研究成果については、今年度、International Journal of Mass Spectrometry誌に論文が掲載された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
International Journal of Mass Spectrometry
巻: 490 ページ: 117086~117086
10.1016/j.ijms.2023.117086