研究課題/領域番号 |
21K15244
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研究機関 | 湘南医療大学 |
研究代表者 |
加藤 紘一 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 講師 (80814821)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脱アミド化 / クリスタリン / 白内障 / アスパラギン残基 / 量子化学計算 / 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
白内障の原因となるアスパラギン残基の脱アミド化について、量子化学計算を用いて反応機構および活性化エネルギーを求めた。C末端側の隣接残基が脱アミド化の反応速度に及ぼす影響を解析するため、異なる隣接残基を持つモデル化合物を用いて計算を行った。その結果、隣接残基がイソロイシンやプロリンなどの場合と比較して、グリシンである場合に活性化エネルギーが小さくなることが示された。また、反応が起こりやすい主鎖のコンフォメーションがC末端側隣接残基によって異なることが示唆された。さらに、隣接残基がイソロイシンの場合、特定の初期構造が不安定であったことから反応が進行しうる構造の形成に制限があると考えられた。このような脱アミド化がタンパク質の立体構造および凝集促進に及ぼす影響を調べるため、γSクリスタリンのアスパラギン残基をそれぞれアスパラギン酸残基に置換した変異体について、分子動力学シミュレーションにより構造解析を行った。いずれの変異体においても、全体的な立体構造に変化は見られなかったものの、局所的な構造に違いが見られた。特にAsn34およびAsn143における脱アミド化は、γSクリスタリンの二量体界面に構造変化をもたらし、二量体化を促進する可能性が示唆された。また、in vitroの系においてもこの2つの変異体は、他の変異体と比較して二量体を形成しやすいことが明らかとなった。したがって、Asn34およびAsn143における脱アミド化は二量体形成を促進し、それに続く凝集体形成を促進する可能性があると考えられた。本結果は、白内障の原因となるγSクリスタリン凝集の原因追及に繋がると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度から湘南医療大学に勤務することになったが、薬学部棟の建設が新型コロナウイルス感染症の影響で遅延し、実験室がない状態であった。そのため、計算系は実行可能であったが、実験系は3月まで実施不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
計算系による解析は予定よりスムーズに進捗している。そのため、当初の予定通りC末端側隣接残基の側鎖が及ぼす影響についてより詳細の解析を進めていく。実験系については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて大幅に遅延している。そのため、今年度は急ぎ進行していく。内容は当初の予定通り、5つのアスパラギン残基の変異体について凝集能の解析を行う。これにより、白内障の原因となる脱アミド化がどのアスパラギン残基で起きるのか特定を進める。また、円二色分散計が導入されたため、熱安定性や二次構造の比較も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度から湘南医療大学に勤務しているが、薬学部棟の建設がなされず、実験が実施できなかったため昨年度はほとんどの費用を使用することができなかった。その分の遅れを取り戻すため、今年度は試薬類や器具類を充足させて実験系を進めていく。また、計算系により得られている結果については、学会発表・論文投稿を進めていく。そのために次年度使用額と翌年度分の助成金を使用する。
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