研究課題/領域番号 |
21K15247
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
冨永 洋子 徳島文理大学, 神経科学研究所, 研究員 (80816538)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | FIOS / 高速内因性シグナル / 神経回路活動ダイナミクス / 非侵襲イメージング / 膜電位応答 |
研究実績の概要 |
脳の高次機能・病態の理解には神経回路全体としての動作の解明が必須である。研究代表者は、これまで膜電位感受性色素(VSD)を用いた神経回路活動ダイナミクスの可視化法に携わってきた。蓄積した光計測手法のノウハウを生かし、新たな高速で膜電位応答に近い内因性シグナル(Fast Intrinsic Optical Signal; FIOS)を見出した。本研究ではこのFIOSを用いて新規の非侵襲的な脳神経活動の計測・解析手法を構築することを目的として研究を進めてきた。VSDのような化学物質による負荷のない、非侵襲の光計測法を開発することで、光学計測の適用範囲を広げ治療薬の開発などの道をひろげたい。 現在までに、特に実績のある齧歯類の海馬脳スライスを用いたVSD実験データを利用してデータ解析・評価方法を検討し、解析用プログラムの開発を重ね、病態モデルマウス、抗てんかん薬や環境ホルモン等に曝露した脳スライスなどを用いた計測において、コントロールマウスと比較して神経回路内のどの部分にどのような変化がおきているのか、評価を行ってきた。 本研究成果については、国内学会(Neuro2022他計8件)、国際学会(Neuroscience 2022他計3件)で発表をおこない、論文として「Stable wide-field voltage imaging for observing neuronal plasticity at the neuronal network level. Biophysics and Physicobiology. (2023)」他、計3本を発表した。2023年度も第46回日本神経科学大会での発表を予定しており、引き続きVSDと同様の計測をFIOSで行なってデータを積み重ね、VSD負荷のないFIOS光計測で神経回路全体の計測・解析・評価を行い、治療薬の開発などに寄与していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績のある齧歯類の海馬脳スライスを用いたVSD実験データを利用してデータ解析・評価方法を検討し、解析用プログラムの開発を重ね、病態モデルマウス、抗てんかん薬や環境ホルモン等に曝露した脳スライスなどを用いた計測において、コントロールマウスと比較して神経回路内のどの部分にどのような変化がおきているのか、評価を行ってきた。これまでの成果については、国内学会(Neuro2022(第45回日本神経科学大会・第65回日本神経化学会大会・第32回日本神経回路学会大会 合同大会)他、計8件)、国際学会(Society for Neuroscience 2022(SanDiego)およびMerocyanine 540/FLaSH meeting(MBL)にて計3件)で発表をおこない、論文として「Stable wide-field voltage imaging for observing neuronal plasticity at the neuronal network level. Biophysics and Physicobiology. (2023), e200015. DOI:https://doi.org/10.2142/biophysico.bppb-v20.0015.」他、計3本を発表した。2023年度も第46回日本神経科学大会での発表を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは特に実績のあるVSD実験データを中心にデータ解析・評価方法を検討し、解析用プログラムの修正を重ね、病態モデルマウスなどを用いた計測において、コントロールマウスと比較して神経回路内のどの部分にどのような変化がおきているのかを評価可能としてきた。同様の計測を継続してFIOSでも行なっていくことにより、VSD負荷のないFIOS光計測においても、神経回路の変化を統計的に評価するなど、FIOSデータ解析を継続する。取得したデータ量は膨大であり、種々の角度からデータを見直し、常にプログラムを開発して、評価解析を行ない、コントロールマウスに対する病態マウスなどの脳神経回路の変化を捉え、統計的に評価可能とする。今後はFIOS変化のメカニズムについてもさらに踏み込んでいきたい。VSDのような化学物質負荷のない状態での計測・データ解析・評価を行うことにより、真に神経回路変化を起こす要因について引き続き検討し、病態に対する治療薬の開発にも寄与したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在までに、特に実績のある齧歯類の海馬脳スライスを用いたVSD実験データを利用してデータ解析・評価方法を検討し、解析用プログラムの修正を重ね、病態モデルマウス、環境ホルモンに曝露した脳スライス、抗てんかん薬等に曝露したマウス脳スライスなどを用いた計測において、コントロールマウスと比較して 神経回路内のどの部分にどのような変化がおきているのか、安定して評価できる方法について模索しており、常に継続してプログラムを開発し、実験で得られたビッグデータに対していろいろな角度からの解析を試みている。本研究で得られた成果について、国内・国際学会において報告・発表し、また論文としても発表することができた。このため、本年度の支出は成果発表実施に伴う費用が多くを占めている。次年度使用が生じた理由は、主に、2021年度の新型コロナによる移動制限等の影響で、現地での学会発表や共同研究等が制限され、予定していた支出が実施できなかったためである。 2023年度も引き続き学会発表等において会場での発表が主となるだろうことが予想されること、また最終年度としてさらに研究成果発表を行う予定であり、引き続き出張旅費などの成果発表に伴う支出が必要となる予定である。また、試薬や器具、動物などの研究必需品、研究器材・消耗品は継続して購入する予定である。
|