研究課題/領域番号 |
21K15249
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
中村 仁美 崇城大学, 薬学部, 講師 (60510691)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗体 / 親和性 / フレームワーク領域 / 荷電アミノ酸 |
研究実績の概要 |
抗体は治療薬や診断薬、研究用試薬などさまざまな用途に応用されており、今後も幅広い領域において有用なツールになると考えられる。当研究室では毒蛇ハブ咬傷患者の後遺症の原因にもなっている筋壊死に対して有効な治療薬の開発を目指し、ハブ毒液に含まれる筋壊死因子(BPII)を標的としたモノクローナル抗体を取得した。現在、これをリード抗体およびBPIIの筋壊死誘導メカニズム解明のためのツールとして用いるための改変を行っている。本研究課題は抗BPII抗体の高機能化の一環として、BPIIに対する親和性を高めることを目的とし、変異体の作製と物性の評価を行う。 今年度の研究内容は以下のとおりである。軽鎖フレームワーク領域(FR)に荷電アミノ酸を導入することで抗原に対する親和性が改善したという報告をもとに、抗BPII抗体フラグメントFabにも同様の変異を導入することとした。抗原であるBPIIが強塩基性蛋白質であることを踏まえ、抗体側に反対電荷を持つアスパラギン酸やグルタミン酸を導入するのが有効ではないかと考え、変異体デザインと遺伝子への変異導入を行った。一方、酵母発現系を用いて抗BPII Fab野生型の調製系構築を進めたところ、その後の物性評価を行うのに十分な量の精製品を得ることができなかった。そこで、収量を上げる(安定性を高める)ための変異部位を検討した結果、重鎖FRへの疎水性アミノ酸の導入により、野生型と比較して約2倍の精製品を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室で確立した酵母Pichia pastorisを用いたFab発現系を利用し、抗BPII Fab野生型の調製系構築を進めたところ、想定よりも収量が低かった。一方、軽鎖FRへの荷電アミノ酸導入の影響でFabが不安定化し、さらに収量が低下することが懸念された。そこで、当初予定していた軽鎖FRへの荷電アミノ酸導入変異体調製の前に、Fabの収量増加(安定化)を目指した変異体作製を行った結果、重鎖FRへの疎水性アミノ酸の導入により収量を上げることができた。また、重鎖FRに導入した変異は抗原との結合には影響を与えないことも確認できた。この変異体作製と並行して、軽鎖FRに荷電アミノ酸を導入するための一連の遺伝子操作も完了した。
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今後の研究の推進方策 |
抗BPII Fabの収量を確保するための安定化変異を重鎖FRに導入し、かつ軽鎖FRに親和性向上を狙った荷電アミノ酸を導入した変異体を調製していく。軽鎖への変異導入の影響で想定よりもFabの発現量が低下してしまった場合は、酵母発現系からCHO細胞発現系への切り替えも検討する。Fab精製品が得られ次第、バイオレイヤー干渉法によるBPIIと抗BPII Fabの相互作用解析を行い、FRに導入した荷電アミノ酸が親和性に及ぼす影響について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種試薬やプラスチック消耗品を節約して使用したことから次年度使用額が生じた。次年度も引き続き、消耗品や備品、旅費に使用予定である。
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