研究課題/領域番号 |
21K15249
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
中村 仁美 崇城大学, 薬学部, 講師 (60510691)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗体 / 結合親和性 / フレームワーク領域 / 荷電アミノ酸 |
研究実績の概要 |
毒蛇ハブ咬傷治療に用いられる抗毒素は出血などの症状に効果を発揮し、迅速かつ適切な投与により、ハブ咬傷被害で死亡する例は稀になっている。しかし、筋壊死の症状を抑える効果が低いために運動障害などの後遺症が残り、咬傷患者のQOL低下につながるケースもある。そのため、筋壊死抑制効果がより高い抗毒素に加え、ハブ毒の筋壊死誘導メカニズムの解明が求められている。当研究室ではこのような状況を踏まえ、ハブ毒筋壊死因子BPIIを標的としたモノクローナル抗体を取得し、これを咬傷治療およびBPIIの筋壊死誘導メカニズム解明のツールとして用いることを目指して物性解析と改変を行っている。本研究課題は抗BPII抗体の高機能化の一環として、BPIIに対する結合親和性を高めることを目的としている。 軽鎖フレームワーク領域(FR)への塩基性アミノ酸導入により酸性蛋白質に対する結合親和性が改善したという報告を参考に変異体デザインを行うこととした。すなわち、本研究課題の抗原BPIIは塩基性蛋白質であることから、抗体フラグメントFabのFRへの酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)導入による親和性改善を試みることとした。今年度は、軽鎖FRのセリン(中性アミノ酸)をアスパラギン酸とグルタミン酸に置換した抗BPII Fab変異体の調製とBPIIとの相互作用解析を行った結果、当初の予想に反し、アスパラギン酸導入により結合親和性が低下し、グルタミン酸導入ではほとんど変化が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の研究成果を踏まえて、抗BPII Fabの安定化のために重鎖FRに疎水性アミノ酸を導入し、かつ軽鎖FRに結合親和性の改善を期待してアスパラギン酸またはグルタミン酸を導入した変異体を調製した。バイオレイヤー干渉法での相互作用解析の結果から、どちらの酸性アミノ酸を導入した場合も親和性の改善にはつながらず、当初の予想とは異なる結果となった。そこで抗BPII Fabの分子モデリングを行い、BPIIと結合する領域の電荷分布を調べたところ、今回変異を導入した部位から離れたところに正電荷のクラスターがみられ、この部分が酸性アミノ酸の導入効果を打ち消している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
抗BPII Fabの分子モデリングの結果からBPIIとの結合面に正電荷のクラスターが存在することがわかったため、それを減弱することが期待される部位に酸性アミノ酸を導入する予定である。また、今年度作製した変異体は3つのセリンをアスパラギン酸またはグルタミン酸に置換したものだが、導入する酸性アミノ酸の数をさらに増やした変異体の作製も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種試薬やプラスチック消耗品を節約して使用したことから次年度使用額が生じた。次年度も引き続き、消耗品や備品、旅費に使用予定である。
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