がん免疫の活性化にはがん細胞由来の抗原による獲得免疫の誘導だけではなく、細胞傷害に伴う内在性分子(DAMPs)の放出による自然免疫の誘導が重要であることが示唆されている。申請者は抗がん剤であるトポテカンがSTING依存的ながん免疫を活性化させるDAMPsのがん細胞からの放出を誘導することを明らかにし、その後の解析からこのDAMPsの放出はトポテカンの既知の標的であるTOP1には依存せず、新規標的であるリボソームタンパクRPLXを阻害することで誘導されることが判明した。RPLXのノックダウンはがん細胞からのDAMPsの放出を促進することでがん免疫の活性化を促進し、担がんマウスモデルにおいて抗PD-1抗体による腫瘍抑制効果を増強した。そのためRPLX特異的な阻害はがん細胞の細胞増殖を抑制するとともに、DAMPsを介したがん免疫の活性化を促進することが示唆されたが、これまでにRPLX特異的な阻害剤は開発されていない。そのためRPLXを特異的に阻害する薬剤はがん免疫を活性化させることでがんの治療に貢献できる可能性がある。本研究ではPROTACによりRPLXを特異的に分解する薬剤の開発とそのがん免疫の活性化能を検証する。2021年度においてはまず、下記の3点について研究を進行した。 (1) ポマリドマイドとトポテカンを結合させたPROTACの作製 (2) ポマリドマイド-トポテカン PROTACによるRPLXの分解誘導の検証 (3) ポマリドマイド-トポテカン PROTACによるがん細胞からのDAMPs産生の評価
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