研究課題
がん免疫の活性化にはがん細胞由来の抗原による獲得免疫の誘導だけではなく、細胞傷害に伴う内在性分子(DAMP)の放出による自然免疫の誘導が重要であることが示唆されている。申請者は抗がん剤であるトポテカンがSTING依存的ながん免疫を活性化させるDAMPのがん細胞からの放出を誘導することを明らかにし、その後の解析からこのDAMPの放出はトポテカンの既知の標的であるTOP1には依存せず、新規標的であるリボソームタンパクRPL15を阻害することで誘導されることが判明した。そのためRPL15を特異的に阻害する薬剤はがん免疫を活性化させることでがんの治療に貢献できる可能性がある。本研究ではPROTACによりRPL15を特異的に分解する薬剤の開発とそのがん免疫の活性化能を検証した。2021年度においては作成した新規PROTACがユビキチン化を介してRPL15の分解をセレブロン依存的に誘導しているかを検証した。さらに新規PROTACががん細胞からのDAMP放出を誘導することで樹状細胞のSTING依存的な自然免疫の活性化を誘導するかをin vitroの実験において検証した。2022年度においては担がんマウスモデルを用いて新規PROTACが抗PD-1抗体による抗腫瘍効果を増強するかをin vivoにおいて検証した。2023年度においてはSTING欠損マウスを用いて新規PROTACによるがん免疫と抗腫瘍効果の増強がSTINGシグナルの活性化に依存するかを検証した。これらの結果から、我々の作成した新規PROTACがRPL15の分解とDAMP放出の誘導により、STING依存的ながん免疫の活性化を誘導することで抗PD-1抗体による抗腫瘍効果を増強させることがマウスモデルにおいて明らかとなった。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 102724~102724
10.1016/j.jbc.2022.102724