研究課題/領域番号 |
21K15252
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
瀬川 良佑 東北大学, 薬学研究科, 助教 (20725296)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 表皮ケラチノサイト / TSLP / 低酸素 / HIF / エピジェネティック制御 |
研究実績の概要 |
皮膚の特に表皮細胞から産生される Thymic stromal lymphopoietin (TSLP) はアトピー性皮膚炎の発症・増悪化に大きく寄与しており、アトピー性皮膚炎の治療標的として着目されている。本研究は低酸素応答誘導剤の一つである Prolyl hydroxylase domain 阻害薬(PHD 阻害薬)が TSLP 産生を抑制するという現象に着目し、その抑制機構の詳細を解明することを目的としている。本研究により明らかとなる抑制機構は新たなアトピー性皮膚炎の治療戦略構築や病態理解につながる。 特に低酸素シグナルのエピジェネティックな転写制御機構への影響に着目し、PHD 阻害薬による TSLP 発現抑制に対して種々のエピジェネティック制御因子阻害剤の効果を検討した。結果としてヒストン脱アセチル化酵素阻害剤により TSLP 発現抑制作用が減弱すること、DNAメチル化転移酵素阻害剤により TSLP 発現抑制作用が増強することを見出した。今後、各エピジェネティック制御因子のノックダウン法も組み合わせて、関与するエピジェネティック制御因子の同定を行う。また低酸素シグナル活性化に重要な転写因子の一つである HIF1α のノックダウンにより PHD 阻害薬による TSLP 発現抑制作用が打ち消されることから、本抑制機序に対する転写因子 HIF1α の寄与を示すことができた。今後は HIF1α による TSLP 発現抑制機構について、HIF1α の TSLP promoter 上での結合部位や、ヒストン修飾の変化に着目して解析を進めていく。 さらに、 PHD 阻害剤による TSLP 発現抑制作用が細菌由来の炎症性シグナルを模倣するTLR2 活性化剤による TSLP 発現誘導に選択的に生じることを見出した。このことから今後は、TLR2 活性化による TSLP 産生シグナルに着目し、PHD 阻害薬による TSLP 発現抑制機構を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定していた TSLP 発現抑制に重要なエピジェネティック制御因子の同定に至らなかった。研究途中で使用している細胞の応答性の減弱がみられ、実験条件の再検討を行ったことで後れを取っている。一方で実験条件の再検討により PHD 阻害剤が TSLP 発現抑制作用を示す TSLP 発現誘導シグナルを絞り込むことができたため、今後、抑制作用機序の解析が加速することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
クロマチン免疫沈降法による TSLP プロモーター上のヒストン修飾の変化、転写因子結合部位の解析について条件検討を行ったが、検出に至らなかった。よりバックグラウンドの低いCUT&RUNに手法を変更して再検討を行う。また、特定のエピジェネティック制御因子、転写因子のノックダウン法を用いた PHD 阻害薬による TSLP 発現抑制作用機構の解析を RT-qPCR 等の手法を組み合わせて継続して進めていく。
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