研究課題/領域番号 |
21K15260
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山本 清威 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (20866553)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血管透過性 / Rap1 / VE-cadherin |
研究実績の概要 |
急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)は、重症肺炎や敗血症などの様々な疾患が原因となり血管透過性が過剰に亢進した結果、重度の呼吸不全となる症状の総称である。また、ARDSは新型コロナウイルス感染症の主要死因でもあるが、現時点において、ARDSを発症した際の生命予後を直接改善できる治療薬は存在しない。本研究では、研究代表者らが血管透過性制御における主要なシグナル分子であること見出した低分子量Gタンパク質Rap1に焦点を当て、生体内においてRap1がどの様に血管透過性を低い状態に維持しているのかを明らかにし、ARDSの革新的治療薬開発に向けた分子基盤を構築することが目的である。 これまでに、内皮特異的にRap1A/Rap1Bを欠損したRap1iECKOマウスを樹立し、このマウスは重度の肺水腫を発症して死亡することを発見していた。そこで、Rap1iECKOマウスで観察された肺水腫が、VE-cadherinを介した細胞間接着の崩壊によるものかどうかを明らかにするため、肺動脈ホールマウント蛍光免染により肺動脈血管内皮細胞のActinとVE-cadherinを染色し、定量解析を実施した。その結果、Rap1iECKO群の肺動脈ではcontrol群と比較して細胞質でのストレスファイバーの形成が有意に増加しており、細胞間接着部位でのVE-cadherin接着も有意に減少していた。また、この障害はRhoの下流シグナル分子であるRho-associated protein kinase (ROCK)の阻害剤であるY-27632を曝露することで一部レスキューできることも明らかとなった。以上の結果から、Rap1はRhoを抑制することでVE-cadherin接着を増強し、肺組織の血管透過性を低い状態に維持していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス流行に伴い、消耗品などの物品納入遅延、解析機器の修理遅延や特別な業務が増加したため、予定していた計画の一部に遅れが生じた。しかしながら、「研究実績の概要」に記載したように一定の結果を得られることができて論文投稿の準備段階に入っているため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から、生体内においてもRap1が肺血管のバリア機能維持に必須であるということが示唆された。また、ROCKを阻害することによってRap1iECKOによる細胞間接着異常が一部レスキューできることも示唆された。この点を踏まえ、次年度はLPS誘発性ARDSモデルマウスを作成し、この肺障害がRap1シグナルの調節によりレスキューできるかを解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行に伴い、購入予定の物品納入の遅延や学会が現地開催からweb開催に変更されたことなどにより次年度使用額が生じた。次年度使用額については、予定されていた動物実験やそれに伴う物品購入費用、現地開催されると思われる学会発表の旅費などと合わせて使用する予定である。
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