研究課題
急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)は、重症肺炎や敗血症などの様々な疾患が原因となり血管透過性が過剰に亢進した結果、重度の呼吸不全となる症状の総称である。また、ARDSは新型コロナウイルス感染症の主要死因でもあるが、現時点において、ARDSを発症した際の生命予後を直接改善できる治療薬は存在しない。本研究では、研究代表者らが血管透過性制御における主要なシグナル分子であること見出した低分子量Gタンパク質Rap1に焦点を当て、生体内においてRap1がどの様に血管透過性を低い状態に維持しているのかを明らかにし、ARDSの革新的治療薬開発に向けた分子基盤を構築することが目的である。これまでに、LPS誘発性ARDSモデルマウスを樹立し、LPSにより敗血症性肺障害を発症した群は血管透過性が亢進していたが、Rap1の上流にあるEpacの活性化剤である007を投与すると色素漏出が抑制されることを明らかにした。本年度は、内皮細胞特異的にRap1A/Rap1Bを欠損したRap1iECKOマウスの肺動脈内皮細胞の解析方法を改良し、定量的に解析を行った。その結果、Rap1iECKO群の肺動脈ではcontrol群と比較して細胞間接着部に沿ったactin繊維が有意に減少し、細胞質でのstress fiberの形成も有意に増加した。加えて、細胞間接着部位でのVE-cadherin接着は有意に減少していた。また、この障害はRho-associated protein kinaseの阻害剤であるY-27632を曝露することでCABの形成とVE-cadherin接着が有意にレスキューできることも明らかとなった。以上により、Rap1シグナルを活性化することで炎症などによる血管透過性の過剰亢進を抑制できることを明らかとした。
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The FASEB Journal
巻: 37 ページ: -
10.1096/fj.202300830RR