研究課題
亜鉛は生体に不可欠な必須微量金属元素であり、その欠乏は様々な疾患を引き起こす。特に、高齢者では血清亜鉛値が低下傾向にあり、これに伴い、認知機能の低下、大腸炎、肝疾患など全身性の症状が誘発される。一方、加齢に伴う低亜鉛血症および関連疾患の発症に関与する分子や機序は不明ある。本研究では、亜鉛の吸収や排出に過程に関与する亜鉛輸送体の発現と亜鉛動態の相関性に焦点を当て、亜鉛吸収機構の全容を解明すると共に、加齢によるその破綻機構を明らかとすることを目標とし研究を進めた。前年度までの亜鉛輸送体の発現と細胞内亜鉛動態の関連性に関する解析から、亜鉛の吸収に関与する輸送体ZIP4と亜鉛の排出に関わる輸送体ZNT1の発現および亜鉛動態が相関することを、ウエスタンブロット法および誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS)を用いた解析により明らかとしてきた。これら知見から、亜鉛の吸収過程においてはZIP4からZNT1へ亜鉛を効率的に受け渡す亜鉛送達因子が存在する可能性を考え、細胞内の亜鉛の受け渡しに関わる亜鉛送達因子の存在の可能性について解析を行った。亜鉛送達因子は、ZIP4から取り込まれた亜鉛の近傍に存在すると予想されるため、遊離亜鉛に応答し近傍に存在するタンパク質をラベル化することが可能な亜鉛コンディショナルプロテオミクス試薬を用いて解析を行った。その結果、ZIP4の近傍に存在する亜鉛送達因子の候補をいくつか得ることが出来た。これらの因子について、実際にZIP4と相互作用するか等、詳細な解析を行ったが、亜鉛送達因子の同定には至らなかった。今後は、クロスリンカーや欠損株などを用いたより詳細な解析を解析を進めることで、亜鉛吸収機構の全容を解明していきたいと考えている。また、老化に伴う亜鉛動態変化と、これら亜鉛の吸収機構に関わるタンパク質との関連性についても引き続き解析を進めてくことを考えている。
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