研究課題/領域番号 |
21K15263
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
幸 龍三郎 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (20779897)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞分裂 / プロテオミクス / がん進展 / がん創薬 |
研究実績の概要 |
がん細胞の分裂過程を標的とする抗がん剤は、臨床応用されており現在も新薬開発が進められている。がん細胞の分裂は破綻したリン酸化シグナリングが担うと考えられているが、その分子機序の全貌は明らかになっていない。申請者は、これまでに分かっていなかった新たなリン酸化シグナリングが、がん細胞の分裂に必要なことを明らかにした。そして、質量分析によるリン酸化プロテオミクスの結果、細胞分裂期において多くの機能未知なリン酸化分子が検出されたことから、更なるリン酸化シグナルの重要性が示唆されている。そこで本研究では、がん細胞分裂を担う新たなリン酸化分子を同定し、分裂制御機構およびリン酸化による機能調節機構を明らかにする。 本年度では、リン酸化プロテオミクスで同定された分子の中から、分裂制御に関わる新規分子をsiRNAスクリーニングを用いて探索した。その結果、いくつかの分子のノックダウンが分裂進行を遅延させることや、多核細胞の増加をもたらすこと、微小管標的薬に対して抵抗性をもたらした。特に、分裂進行には細胞膜に局在するトランスポーターやRNA結合分子が関与することが明らかとなり、それぞれの機能を介した分裂制御機能が存在することが示唆された。また、脱リン酸化酵素PP1を阻害するSH2D4Aのノックダウンもまた、分裂進行をもたらすことが示された。SH2D4Aノックダウンは中心体の成熟遅延による微小管の新生低下を介して分裂前中期の延長を誘導することが分かった。この作用は、PP1阻害剤であるCalyculin Aによって回復したことから、SH2D4AノックダウンによるPP1阻害を介したリン酸化バランスの異常が分裂遅延に至ったと示唆される。SH2D4Aに関する研究は論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
siRNAスクリーニングの結果をさらに確定させるために、ノックダウンレスキュー系にて確認を行いながら進めているが、概ね順調に進捗が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
SH2D4A以外の同定した分子がどのように分裂支持などに寄与しているのか解析を進める。特に、同定したトランスポーターはがん細胞において高発現を示すマーカー分子としても広く知られており、本研究課題で取り組むがん細胞分裂を支持する分子である可能性が高い。そこで、そのトランスポーターの輸送活性が分裂支持に重要なのか明らかにするとともに、輸送活性が不要な際には結合分子の解析を通して分裂支持機構の詳細なメカニズムを明らかにする。さらには、正常細胞、がん細胞間での機能の差を明確にすることで、破綻したリン酸化シグナルを基盤としたがん細胞分裂によるがん進展機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
キャンペーンの利用などで効率的な運用を心がけたため。 次年度の詳細なメカニズム解析の際に利用する予定。
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