研究課題/領域番号 |
21K15266
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
原 雄大 近畿大学, 薬学部, 助教 (20803779)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリオーマ / CCR4 / Th17細胞 |
研究実績の概要 |
脳腫瘍の1種であるグリオーマは、治療薬がほとんど無く、手術での除去も困難なことより、極めて難治性である。様々ながん種において、制御性T細胞(Treg)やTh17細胞などのT細胞サブセットの果たす役割が解明されつつあるが、グリオーマ患者ではそれら細胞の脳および腫瘍への浸潤が報告されているものの、病態に及ぼす影響については未だ不明である。 TregやTh17細胞には、ケモカイン受容体CCR4が発現しており、これら細胞の遊走に関わる主要な制御因子として知られている。グリオーマ患者脳内では、CCR4のリガンドであるCCL17の発現が報告されていることより、CCR4を介してTregやTh17細胞が脳内へと浸潤していると考えられるが、浸潤機序の詳細は未だ不明である。 本研究課題では、グリオーマにおけるCCR4の寄与について解明することを目的としている。 マウスグリオーマ細胞株CT-2Aを脳内に投与し、グリオーマモデルマウスを作製した。まず、CCL17発現をELISA法および免疫染色法にて解析した。正常マウスの脳および腫瘍周辺の脳組織と比較し、腫瘍においてCCL17の発現が顕著に増加した。また、CCL17は、血管内皮細胞やマクロファージ/ミクログリアより産生されていることを見出した。続いて、CCR4の寄与について検討するため、CCR4欠損マウスを用いてモデルマウスを作製した。CCR4欠損マウスは、野生型マウスと比較し、腫瘍の増殖が有意に亢進した。脳内への浸潤細胞をフローサイトメトリー法により解析したところ、Tregや細胞傷害性T細胞には変化は認められなかったが、Th17細胞の割合がCCR4欠損マウスで有意に減少した。本成績より、グリオーマにおいて、CCR4はTh17細胞の遊走を介して腫瘍増殖に影響している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCR4がTh17細胞の遊走を介し、グリオーマ病態に関与している可能性を見出した。そのため、研究の根幹の項目については順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Th17細胞の浸潤減少と腫瘍増殖の亢進との関連性について追究していく。また、CCR4阻害薬やIL-17Aの中和抗体等を用いて、腫瘍増殖の変化について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で実験が制限されており、予定していたが実施できなかった実験があるため。 今年度使い切れなかった額は、翌年度すべて物品費として使用する予定である。
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