研究課題/領域番号 |
21K15271
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岡元 拓海 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (40826351)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユビキチンリガーゼ / RNF183 / 高浸透圧ストレス / オートファジー / p62 |
研究実績の概要 |
腎臓の中でもより厳しい高浸透圧環境である集合管に特異的発現を示すRNF183の生理機能については解明されていない。今年度は、まず、ビオチンリガーゼBirAを融合したRNF183を発現させ、RNF183の近傍タンパク質をビオチン化し、ビオチン化タンパク質を回収する近位ビオチン標識法により、RNF183の近傍タンパク質を回収した。ショットガンプロテオーム解析により、RNF183結合タンパク質候補としてNKCC1を同定した。その後、RNF183とNKCC1の結合、RNF183によるNKCC1のユビキチン化を確認した。RNF183過剰発現細胞においてNKCC1への影響を検証したところ、本来細胞膜に局在するNKCC1がRNF183と共発現させることで細胞内へ移行し、分解されることを見出した。また、このRNF183によるNKCC1の分解はクロロキンにより阻害され、一方で、MG132によっては阻害されないことを見出した。さらに、内在化したNKCC1がオートファジーのマーカーであるp62と一致し、高浸透圧ストレスを付加するとRNF183によるNKCC1の細胞内への内在化が促進される結果も得た。組織レベルでのRNF183の基質タンパク質同定のために、ビオチンリガーゼBioID2をRNF183遺伝子にノックインしたBioID2ノックインマウスも現在作製中であり、今後、作製したBioID2ノックインマウスを用いて組織レベルでのRNF183の基質タンパク質の同定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNF183結合タンパク質候補としてNKCC1を同定した。その後、RNF183とNKCC1の結合、RNF183によるNKCC1のユビキチン化を確認した。RNF183過剰発現細胞においてNKCC1への影響を検証したところ、本来細胞膜に局在するNKCC1がRNF183と共発現させることで細胞内へ移行し、分解されることを見出した。また、このRNF183によるNKCC1の分解はクロロキンにより阻害され、一方で、MG132によっては阻害されないことを見出した。さらに、内在化したNKCC1がオートファジーのマーカーであるp62と一致し、高浸透圧ストレスを付加するとRNF183によるNKCC1の細胞内への内在化が促進される結果も得た。ATG5もしくはBeclin-1ノックアウト細胞を用いて、RNF183によるNKCC1の分解が阻害されるか検証する。ATG5およびBeclin-1ノックアウト細胞は作製済みである。また、組織レベルでのRNF183の基質タンパク質同定のために、ビオチンリガーゼBioID2をRNF183遺伝子にノックインしたBioID2ノックインマウスも現在作製中であり、今後、作製したBioID2ノックインマウスを用いて組織レベルでのRNF183の基質タンパク質の同定を行う。mIMCD3細胞を用いた内在性RNF183の基質タンパク質の同定のために、PITCh法によるBioID2のノックインを試みたが、BioID2のノックインされたmIMCD3細胞が取得できなかったため、ポリユビキチン鎖に高い親和性を持つTUBEを用いた解析へと変更し、現在解析中である。内在性RNF183の基質同定法に変更は生じたが、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、内在性RNF183を発現しているmIMCD3細胞において基質タンパク質の同定を行う。また、BioID2をRNF183遺伝子にノックインしたBioID2ノックインマウスを作製し、組織レベルでのRNF183の基質タンパク質を同定する。さらに、mIMCD3細胞においてRNF183ノックアウト細胞を樹立し、高浸透圧ストレスを付加した条件下で培養したRNF183ノックアウト細胞と野生型細胞においてRNAシーケンスを行い、比較することで、どのような遺伝子発現変化が認められるか網羅的に解析し、RNF183が関連したオートファジー経路を同定する。同定したタンパク質をノックダウンし、RNF183が関連したオートファジーが阻害されるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
BioID2をRNF183遺伝子にノックインしたBioID2ノックインマウスの作製が依頼先の事情で遅れてしまい、マウスを用いた実験の開始が遅れてしまった。その代わり、培養細胞を用いた実験を予定より進めることが出来たが、マウスの飼育費が必要とならなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、作製したBioID2ノックインマウスを用いた解析も精力的に遂行する。また、一部は得られた研究成果を学会等で発表するための旅費や論文投稿費として使用する予定である。
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