研究課題/領域番号 |
21K15276
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
安田 浩之 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40780284)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞外トラップ / 消化管炎症 / PADI2 / PADI4 |
研究実績の概要 |
本研究では、炎症性腸疾患(IBD)をはじめとする消化管炎症において、細胞外トラップであるNETsやMETsの病態への関与とその誘導機構をPADI2とPADI4に着目して明らかにするために、阻害剤などの薬理学的ツールや遺伝子改変マウスを用いて実験を進めている。DSS大腸炎モデルとTNBS大腸炎モデルを用いて、PADI阻害剤を投与したところ、DSS大腸炎モデルでは有意な変化がなかったのに対し、TNBS大腸炎モデルでは病態の改善が認められた。このとき細胞外トラップの誘導も抑制していたため、TNBS大腸炎モデルでは細胞外トラップが病態の進行に重要な役割を担っていると考えられる。また、PADI2KOマウスとPADI4KOマウスをCRISPR-CAS9システムにより作製した。PADI2KOマウスとPADI4KOマウスから腹腔マクロファージを回収し、PADI2とPADI4の発現を確認したところ、PADI2KOマウスはPADI2のみが、PADI4KOマウスはPADI4のみが欠損していた。このPADI2KOマウスを用いて、DSS大腸炎モデルとTNBS大腸炎モデルで評価したところ、阻害剤を用いた検討同様、TNBS大腸炎モデルでは病態が改善し、DSS大腸炎モデルではむしろ、病態が悪化する傾向となった。これらの結果から、少なくともPADI2はTNBS誘起マウス大腸炎において、重要な因子であることを示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR-CAS9システムによりPADI2KOマウスとPADI4KOマウスを約1年で作製することができ、ただちに大腸炎モデルでの検討を行うことができた。現在までに、PADI2KOマウスを用いた各大腸炎モデルでの検討を行った。DSS大腸炎モデルでは体重減少、下痢・下血の亢進、大腸の長さの短縮といった結果から病態が悪化することが明らかとなった。TNBS大腸炎モデルでは体重減少の改善、肉眼的な損傷部位の低下、各種サイトカインの発現抑制という結果が得られ、病態が改善することがわかった。この結果は、PADI阻害剤であるCl-amidineを用いた結果と同様だったが、PADI4阻害剤やPADI4KOマウスでの検討はまだ行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
PADI2KOマウスにおける各大腸炎モデルにおいて、異なる結果が得られた。今後はPADI4KOマウスを用いて、DSS大腸炎モデルとTNBS大腸炎モデルでの病態の評価を行う予定である。また、in vitro実験系において、好中球だけでなく、マクロファージから細胞外トラップが誘導されるかどうか検討する。さらに、細胞外トラップが直接病態に関与するかどうか、細胞外トラップ阻害剤であるDNaseⅠを投与して、各大腸炎モデルで評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果に関する費用が予算額より下回ったため、次年度使用額が生じた。その費用は次年度の研究成果に関わる費用に充てる予定である。
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