昨年度までにリポ多糖(LPS)投与により作成した敗血症モデルを用いて、プロスタグランジンF2α(PGF2α)の受容体阻害剤を投与していないマウス比較し、PGF2αの受容体阻害剤を投与したマウスでは、敗血症の初期では炎症が悪化するが、後期では炎症および症状が抑制されることを明らかにした。本年度は、その詳細な作用機序の解明を行った。 敗血症の初期では、生体防御機構としてマクロファージの活性化を促進させ炎症を促進させることで菌の排出を促進させるが、後期では好中球によるIL-10が炎症を抑制する。そこで、PGF2αの受容体阻害剤が敗血症の初期ではマクロファージの活性を促進させ、後期では好中球の活性を促進させると仮説立てた。まず、PGF2αの受容体阻害剤が、マクロファージによる炎症性メディエーターの産生に与える影響を明らかにした。マウスマクロファージ細胞株にLPSを投与すると炎症性メディエーターの遺伝子発現レベルが上昇したが、PGF2αの受容体阻害剤を投与しLPSを投与すると、さらに炎症性メディエーターの遺伝子発現レベルが上昇した。次に、PGF2αの受容体阻害剤が好中球浸潤およびIL-10産生に与える影響を検討した。PGF2αの受容体阻害剤は、好中球の浸潤には影響を与えなかったが、好中球由来のIL-10産生量を促進させた。以上の結果より、PGF2αの受容体阻害剤を投与することで、敗血症の初期ではマクロファージの活性化を促進することで炎症は促進するが、後期では好中球由来のIL-10産生を促進することで炎症が抑制させることが明らかとなった。
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