研究実績の概要 |
本研究の目的は,SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Sタンパク質)のプロセシングを抑制する生薬エキスを探索することを目的としている。Sタンパク質のS1/S2境界部分にはFCS(Furin-cleavage site)が存在し、細胞内Furin/Furin様プロテアーゼによって切断活性化を受け、細胞への侵入が行われる。本研究ではFCSの開裂抑制効果を有する生薬エキスの探索を行った。生薬エキス130種について、FurinのmRNA発現解析及びFurin認識ペプチドを用いたFurin様酵素活性の抑制効果を実施し、開裂抑制効果を示す生薬のスクリーニングを実施した。Caco-2細胞を用いて、FurinのmRNA発現解析を実施したところ、マオウエキス、タイソウエキスに発現抑制効果が認められた。次にCaco-2細胞のライゼートを酵素群としたFurin様酵素活性に対し、ペプチド開裂抑制効果を示す生薬のスクリーニングを実施したところ、ジャショウシエキスやアマチャエキスに活性阻害効果が認められた。さらに、特に強く活性を阻害したジャショウシエキスについて、活性抑制効果を有する成分を単離したところ、Osthole, Imperatorinに活性抑制効果が認められることを明らかにした。また、コウボクの成分であるHonokiolがFurin様酵素活性の抑制効果を示すことを明らかとし、VeroE6細胞における感染抑制効果を示したことを論文として公開した(Tanikawa, T.et al. J Tradit Complement Med., 12(1), 69(2022))。今後、発現解析や酵素活性阻害評価により得られた生薬エキスについて、Sタンパク質に対する開裂抑制効果を評価する予定である。
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