本研究で、NCTは、細胞毒性や抗菌活性を全く示さずに、ある種の真菌細胞膜脂質を特異的に認識することを明らかとした。NCTの作用機序を完全に解明することは、生体膜脂質に関する基礎生物学的な新たな知見をもたらすことが学術的に期待されるだけでなく、膜脂質の挙動を長時間モニターできる研究用ツールとしてのNCTの応用も期待できる。臨床面では、薬剤耐性真菌の出現などから真菌感染症に対する対策は重要である。本研究で、NCTはin vivoレベルでも有効性を示す可能性を示した。今後、NCTは、既存の抗真菌薬の効果を最大限に高めるという、新たな「抗真菌感染症薬」のシードとして利用されることが期待される。
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