研究課題/領域番号 |
21K15285
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
今野 翔 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70882190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非リボソームペプチド合成酵素 / 環化酵素 / チオエステラーゼ / 環状ペプチド / 生合成 |
研究実績の概要 |
ペプチド性天然化合物の生合成酵素である非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)において、環化反応は主にチオエステラーゼ(TE)が担っており、効率的に分子内環化反応を触媒する。近年、TEを利用した環状ペプチドの化学酵素合成が可能になりつつある。本研究課題では、環状リポデプシペプチドMA026の生合成酵素に存在するタンデム型TEの機能を明らかにし、タンデム型TEを用いた化学酵素合成への可能性を検証する。 まず、MA026生産菌であるPseudomonas sp. RtlB026のゲノム情報を基に、antiSMASHによるMA026生合成遺伝子の検索を行い、MazC_TE1-TE2の遺伝子情報を取得した。次にMazCのTE1-TE2およびTE1、TE2に該当する合成遺伝子をそれぞれpET28ベクターに導入し、大腸菌を用いた組換えタンパク質の発現を試みた。全ての組換えタンパク質において発現を確認できたが、可溶性画分には存在せず不溶化していることが判明した。種々条件による不溶性タンパク質のリフォールディングを試みたものの、可溶化することはなかった。そこで可溶性タンパク質の獲得をめざし、上流のPCPドメインを導入したPCP-TE1-TE2およびPCP-TE1遺伝子を作製し、N末端Hisタグ融合タンパク質として発現したところ、これらのタンパク質が可溶性画分に存在することが明らかになった。TE2については、可溶性タグであるGSTをN末端に付加した融合タンパク質として発現したところ、可溶化させることに成功した。一方、基質となる直鎖ペプチドチオエステルはFmoc固相合成法を用いて合成した。Trt(2-Cl)レジンを用いた固相ペプチド合成にて保護ペプチドを取得したのち、液相にてチオエステル化と脱保護を行い直鎖MA026のSNAC体を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的タンパク質の不溶化というトラブルがあったが、遺伝子組換えによりそれぞれ可溶性タンパク質として得ることに成功した。また、固相合成により基質となる直鎖ペプチドチオエステルの合成も完了したことから、おおむね初年度の目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画通り、組換えタンパク質と合成基質を用いてタンデム型TEの機能解析を行う。必要に応じて変異酵素などを作製し、それぞれのTEの役割を明らかにしていく。また、基質誘導体を合成し、化学酵素合成への可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はタンパク質発現条件の検討を重点的に行なったため、合成試薬などの購入が当初の予定以上に抑えられた。次年度は、機能評価や種々基質誘導体の合成など多くの試薬購入が見込まれることから、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用していく。
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