研究実績の概要 |
本研究課題では、Calothrixin類の化学構造と抗腫瘍活性との関係を検討する。そのために、calothrixin類の化学構造を変換可能な新たな合成法として、calothrixin類のコア構造であるインドロ[3,2-j]フェナンスリジン骨格は、熱エネルギーを利用した電子環状反応により構築することとし、本年度は、以下の点について研究を行った。 (1)熱エネルギーを利用したタンデム型閉環反応の開発 昨年度、calothrixin Bのピリジン(D環)部構築に熱電子環状反応が有効であることを明らかにすることができた。本年度は、さらに鈴木-宮浦カップリング反応と熱電子環状反応が一挙に進行する熱エネルギーを利用したタンデム型熱閉環反応の開発を進めた。カルバゾールキノン誘導体とホウ酸誘導体からカップリング反応により系内でアザトリエン誘導体を合成し、単離することなく熱を加えることで一挙にインドロ[3,2-j]フェナンスリジン骨格を構築できた。その結果、calothrixin類を含む関連化合物の合成を短工程で簡便に行う方法論の開発を行うことができた(学会報告、論文作成中)。 (2)Calotirixin誘導体の合成と生物活性評価 上述した方法論を活用し、これまでに報告例のないcalothrixin類のD, E環部のキノリン構造をイソキノロン環、ナフタレ環、キノロン環に変換したcalothrixin誘導体を合成し、ヒト癌細胞に対する生物活性評価試験を実施した。しかし、いずれの誘導体においても抗腫瘍活性は示したものの、天然物であるcalothrixin類の抗腫瘍活性と同程度あるいは低い活性を示す結果であった。また、calothrixin類のA環部に電子供与性基や電子吸引性基をもつcalothrixin誘導体についても合成を検討し、現在、生物活性評価を継続中である。
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