緩下薬として頻用される大黄甘草湯の下剤効果は、食習慣に起因した腸内細菌叢の変化によって下剤効果の発現が異なることを明らかにしているが、大黄甘草湯の下剤効果の発現と腸内細菌叢の変化との因果関係を証明するには至っていない。これまでの研究で、大黄甘草湯の下剤効果の発現と腸管炎症を惹起するEnterobacteriaceae科細菌の増加との関連性が示唆されたが、その因果関係は不明のままであった。 本研究では、大黄甘草湯の主有効成分であるセンノシドAの腸内代謝変化だけではなく、腸管から分泌される免疫グロブリンA(IgA)によるEnterobacteriaceae科細菌など腸内細菌叢への制御変化も下剤効果の発現に起因しているのではないかと考え、大黄甘草湯の投与前後のIgAの質的および量的変化、短鎖脂肪酸などの腸内代謝産物の変化などの検討を進めている。 昨年度からセルソーターによるIgA結合細菌の分離手法の再構築を繰り返してきたが、今年度に確立することができ、現在までにほとんどのサンプルについてデータ取得を完了した。まだすべてのサンプルについて解析が終了しておらず、鋭意進めている状況にある。また、14種の短鎖脂肪酸の産生量変化も検討および腸管バリア機能の発現変化など多角的にデータを取得しており、解析を進めている最中である。 本研究の手法を用いることで、大黄甘草湯だけではなく他の漢方薬についても腸内細菌叢および腸管免疫系を介した作用メカニズムの解明に繋げることができる。
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