研究課題/領域番号 |
21K15289
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
太田 智絵 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (10804221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オートファジー / メラニン / 色素異常症 / 天然物 |
研究実績の概要 |
本研究は、オートファジーを介してメラニンを制御する天然物を探索することで、新たな作用機序を有するメラニン制御物質を見出し、色素異常症に対する新たな治療薬の創出および治療標的分子の発見に貢献することを目標としている。 一昨年度、ケラチノサイトHaCaT細胞を用いて、130種の生薬エキスによるLCⅢ-2およびp62の発現を確認した。その結果、ケイヒ、シコン、マオウ、ウズの4エキスがLCⅢ-2およびp62の発現を大きく変動させることを明らかにした。昨年度はこれらのうちマオウエキスに着目し、分離精製を実施した。さらにエキスを分画し、得られたn-ブタノールおよび水画分に活性が集約されることを確認した。今年度はn-ブタノール画分について成分分析を進めた。n-ブタノール画分にエフェドリン類が含まれているかを確認するため、日本薬局方で定められたエフェドリンの確認試験に従い、薄層クロマトグラフィー法を行った。その結果、複数のスポットがニンヒドリン試薬により呈色反応を示したことから、n-ブタノール画分にエフェドリンなどのアルカロイド類が含有していることを確認した。n-ブタノール画分には他にもタンニン類などが含有している可能性があり、現在も解析を進めている。 さらに、上記4エキス以外のメラニン制御物質の探索も昨年度に引き続き実施した。昨年度はクズ葉エキスおよびそのヘキサン画分にマウスメラノーマB16-F1細胞のメラニン合成促進作用を示すことを明らかにしてきた。さらに、これらのエキスおよび画分は、ヒト皮膚3次元モデルにおいても黒化を誘導することを明らかにした。今年度はヘキサン画分について各種クロマトグラフィーを用いて分離精製を行い、5種の化合物を得た。これらの化合物について活性を測定したところ、いずれの化合物にも顕著な活性が認められなかった。そのため、現在単離をさらに進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属機関が変更したため、サンプル移設の手続きや実験環境を整える必要があった。そのため、当初予定していた計画より進捗が遅れる結果となった。しかしながら、現在は実験環境も整っているため、今後は順調な進行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
4つの生薬エキスについて、活性を指標にして分離精製を行い、活性成分を単離同定する。特に活性が顕著であったマオウを中心に進める。見出した活性成分に対して、類縁体を合成し、それらについて活性を比較することで、活性増強に必須構造を明らかにする。さらに、メラノサイトNHEM細胞やHEMn-DP細胞においてもLCⅢ-2およびp62の発現変動を確認することで、活性を確実なものとする。 選抜した生薬エキスのオートファジーおよびメラニン産生・蓄積への影響を、メラノサイト細胞とケラチノサイト細胞の共培養系やヒト皮膚三次元モデルを用い、LCⅢ-2とp62の発現変動、さらにメラニン量の変化を測定する。 強いメラニン誘導能を示したクズ葉のヘキサン画分においては、活性本体の同定を試みる。 加えて、B16-F1細胞およびHaCaT細胞における、クズ葉のヘキサン画分のLCⅢ-2およびp62の発現変動を確認することで、オートファジー制御能の有無を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究代表者の異動のため、実験環境を整える必要があり、当初の予定より進捗が遅れる結果となった。次年度は、活性成分の単離・構造決定および詳細な作用機序解明を実施していく予定である。加えて、研究成果について学会発表なども積極的に行っていく。
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