研究課題
ABCG2は薬物の体内動態や毒性の制御を担うトランスポーターである。研究代表者は、これまでに、高尿酸血症治療薬であるフェブキソスタット(FEB)が臨床上到達し得る濃度域においてABCG2を阻害することを明らかにした。本研究では、FEBによるABCG2阻害の臨床的重要性を有害事象発現の観点から明らかにすることを目的とする。そのために、造血幹細胞上のABCG2に着目し、ABCG2基質となる抗悪性腫瘍薬による骨髄抑制に対してFEBの併用が与える影響を検証した。東京大学医学部附属病院においてシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン併用療法(CHOP療法)を施行した患者を対象に、後ろ向きカルテ調査により腫瘍崩壊症候群(TLS)予防としてFEBを用いた患者とそれ以外の患者で骨髄抑制の頻度およびGradeを比較した結果、FEBが高用量の場合は骨髄抑制が増強される傾向が認められたものの、有意な差には至らなかった。しかしながら、興味深いことに、TLS予防として尿酸代謝酵素であるラスブリカーゼを用いた群において、骨髄抑制が有意に増強している様子が認められた。当初の研究目的とは異なるものの、本研究を通して臨床的に重要な知見が見いだされてきていると考えている。ラスブリカーゼは組み換えタンパク質製剤であるため、直接的な薬物相互作用によりCHOP療法で投与される抗がん剤の体内動態に影響を与えることは考えにくいことから、今後は薬物動態学的な相互作用以外の観点から本現象を検証していく予定である。
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