研究課題/領域番号 |
21K15295
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲垣 孝行 名古屋大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (90835406)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クラリスロマイシン / Mycobacterium avium / 薬剤耐性遺伝子 / 23SrRNA / ARMS法 / LAMP法 / 肺MAC症 / 非結核性抗酸菌 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子変異検出法であるARMS法及び等温遺伝子増幅法であるLAMP法を応用し、クラリスロマイシン耐性の有無を喀痰から直接DNAを抽出し、喀痰検体提出から数時間で特殊な機器が必要なく薬剤耐性の有無を判定するARMS-LAMP法を開発することを目的としている。 令和3(2021)年度の研究実施計画は、培養後に抽出したDNAを用いて等温増幅蛍光測定装置のLoopampEXIAとGenelyzerFⅢのLAMP反応の比較および肺MAC症患者由来喀痰検体の収集方法の確立である。 以下の研究成果が得られた。 1. M.avium基準株2株、肺M.avium症患者由来クラリスロマイシン感受性株3株、肺M.avium症患者由来クラリスロマイシン耐性株3株を使用し、LoopampEXIAとGenelyzerFⅢのLAMP反応の比較をした。各プライマーセットのLAMP反応は、同等の結果を示した。一方で、鎖置換型DNA合成酵素は、LoopampEXIAで"Bst"を用い、GenelyzerFⅢで"Gsp"とそれぞれ異なるため、LoopampEXIAでは反応時間が約 60 分であったのに対して、GenelyzerFⅢでは反応時間が約 30 分に短縮した。また、GenelyzerFⅢは、解離曲線解析も実施可能であり、増幅産物への反応特異性の確認も可能であった。 2.本研究は、名古屋大学医学部附属病院医療技術部・臨床検査部門・微生物検査室において臨床検査で不要となった残余検体を分与されたものを使用するため、名古屋大学医学部附属病院における生命倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:2021-0471)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由:令和3(2021)年度の研究目的は、培養後に抽出したDNAを用いて等温増幅蛍光測定装置のLoopampEXIAとGenelyzerFⅢの比較および肺MAC症患者由来喀痰検体の収集方法の確立である。令和3(2021)年度の研究実施計画に基づいて実施した研究の進捗状況から、下記の理由により、当該年度における達成度については、やや遅れていると考える。 1.培養後に抽出したDNAを用いて等温増幅蛍光測定装置のLoopampEXIAとGenelyzerFⅢの比較について M.avium基準株2株、肺M.avium症患者由来クラリスロマイシン感受性株3株、肺M.avium症患者由来クラリスロマイシン耐性株3株を使用し、LoopampEXIAとGenelyzerFⅢのLAMP反応の比較をした。しかしながら、当該年度の期間中、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、実験時間の大幅な制限が生じたため、検体数を増やし検討することが困難であったため、今後LoopampEXIAとGenelyzerFⅢ間で異なるLAMP反応が生ずる可能性も否定できない。 2.肺MAC症患者由来喀痰検体の収集方法の確立について 新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、大幅な制限が生じたため、名古屋大学医学部附属病院における生命倫理審査委員会の承認が年度末となり、当該年度の期間中に肺MAC症患者由来喀痰検体の収集が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策について、引き続き培養後に抽出したDNAを用いて等温増幅蛍光測定装置のLoopampEXIAとGenelyzerFⅢの比較および肺MAC症患者由来喀痰検体の収集方法の確立することを追求する。そのため、令和4(2022)年度の研究期間中に下記の事項についての解析を行う。 1.M.avium臨床分離株を培養後に抽出したDNAを用いて、LoopampEXIAとGenelyzerFⅢにおけるLAMP反応の比較について検体数をさらに増加させ、非特異的なLAMP反応の有無や至適LAMP反応時間を検討する。 2.喀痰検体については、名古屋大学医学部附属病院において肺MAC症と確定診断された患者からの喀痰検体、もしくは既に肺MAC症と確定診断されている患者からの喀痰検体、年間合計30検体程度を予定している。採痰は、患者 1 人につき 1 回とする。喀痰検体は、臨床検査で不要となった喀痰溶解酵素 (スプタザイム) で溶解および均一化した検体をN-アセチル-L-システイン・水酸化ナトリウム ( NALC-NaOH ) 法により前処理を行った後の残余検体を分与されたものについて各解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3(2021)年度の研究実施計画において、M.avium臨床分離株を培養後に抽出したDNAを用いて、LoopampEXIAとGenelyzerFⅢにおけるLAMP反応の比較する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、大幅な制限が生じたため、予定検体数を実施することができなかった。上記計画については、令和4(2021) 年度において引き続き実施する予定であり、繰り越した研究費を使用する予定である。当該支出分については、令和4(2022)年度の実支出額に計上する予定である。 令和4(2022)年度の研究実施計画に従って、研究を遂行するため、以下の様に研究費を執行する予定である。1.分与された残余検体である肺MAC症患者由来喀痰検体を、PURE DNA 抽出キットを用いて直接DNAを抽出し、ARMS-LAMPを実施する。2.液体培地マイコブロスを用いて培養した後、薬剤感受性試験を実施する。
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