研究実績の概要 |
ベバシズマブによって誘発される高血圧や蛋白尿の発現機序の一つとして血管内皮機能障害が関連することが考えられているが、これら副作用に対する血管内皮機能の影響は不明である。本研究では、ベバシズマブ投与患者の血管内皮機能を評価し、高血圧および蛋白尿との関連性を検討した。対象はベバシズマブ治療を受ける肝細胞がん患者10例とした。。血管内皮機能はEndo-PAT2000システムを用いて評価し、Reactive Hyperemia Peripheral Arterial Tonometryから得られるReactive Hyperemic Index(以下、RHI)を指標とした(RHI異常値:1.67未満)。観察期間中央値は7.2か月であった。Grade2以上の高血圧および蛋白尿は、10例のうち5例および3例でそれぞれ認められた。治療後(最大値)のSBPおよびUPCは、いずれも治療前に比べて有意に増加した(p<0.01およびp<0.01)。RHI異常値は、10例のうち5例で認められた。1サイクル終了時点の平均RHI(1.81±0.53)は、治療前(2.13±0.71)に比べて有意に低下した(p<0.01)。SBPおよびUPCに対するRHIとの相関性については、統計学的な有意差は認められなかったが、いずれも負の相関傾向を認めた(r=-0.60, p=0.06およびr=-0.61, p=0.05)。これらの結果は、ベバシズマブによって誘発される高血圧および蛋白尿は血管内皮機能障害によって引き起こされる可能性があることを示唆している。
|