研究課題/領域番号 |
21K15302
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
横山 雄太 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (70725796)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ボリコナゾール / タクロリムス / 薬物代謝バイオマーカー / PK/PD / 代謝物濃度 / 拒絶反応 / 至適血中濃度 |
研究実績の概要 |
TDM対象薬のボリコナゾール(VRCZ)およびタクロリムス(TAC)の未変化体および代謝物濃度の臨床薬物動態学(pharmacokinetics: PK)/薬力学(pharmacodynamics: PD)および薬物代謝、内在性バイオマーカーの関係を明確化する目的に実施した臨床研究の成果を下記に示す。 1)VRCZ投与された小児20名の血中濃度濃度を用いて、薬物代謝能(VNO/VRCZ)に関連する血中濃度の変動因子を同定し、血中濃度の変動因子を考慮した最適な投与方法の構築に向けた母集団薬物動態(PPK)解析を実施中である。 2)後方視的研究で肝移植後の小児におけるPPK解析によるTACの血中濃度時間曲線下面積(AUC)を算出し、拒絶反応発症に与える影響を検討した。生体肝移植を受けた66名の肝移植後の小児のトラフ濃度(n = 1661)を用いてPPK解析を実施した。1-コンパートメントモデルを採用し、共変量としてCLには併用薬のプロトンポンプ阻害剤、AST、総ビリルビン、体重(移植時)、血清アルブミン値、分布容積には体重を組み込んだ。最終モデルより推定されたCLからAUCを算出した。移植後7日間のAUC0-12 hの最小値と最大値の変動幅の中央値(範囲)は拒絶反応無し群では260(120-485)ng・h/mL、拒絶反応有り群では275(156-675)ng・h/mLであり、拒絶反応有り群で有意に高かった(p < 0.05)。ROC曲線によるカットオフ値(273 ng・h/mL)で2群に分け、カプランマイヤー法での結果、変動幅273 ng・h/mL以上と移植後30日間の拒絶反応発症には有意な関連が見られた(p < 0.05)。肝移植後の小児におけるPPKモデル構築により、TACの曝露量を明らかにし、術後早期のAUCの個体内変動幅が拒絶反応発症に影響している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究先の国立成育医療研究センターと連携し、臨床研究に関連する倫理委員会において承認され、患者検体の濃度測定およびカルテ調査によるデータ取得について順調に実施している。
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今後の研究の推進方策 |
小児におけるVRCZおよびTACのPK/PD研究において、前向き観察研究でのVRCZ使用の小児のVRCZおよびVNOの血中濃度を含めた臨床情報は十分に取得出来ており、代謝能に関連する薬物代謝バイオマーカーと薬物濃度推移との関連性を加味して母集団薬物動態解析を実施予定とする。また、肝移植後のTAC使用小児でのTACの適正使用に関した前向き観察研究について、倫理委員会からの承認を得て、実施中である。患者登録が完了後にTACの薬物動態解析を行い、遺伝子多型解析および拒絶反応に関連するFACSの結果も用いて、タクロリムス血中濃度の変動因子・拒絶発症リスク因子を探索し、拒絶反応の発生の抑制に向けたpharmacokinetics/pharmacodynamics/pharmacogenetics (PK/PD/PGx)解析により、タクロリムスの至適投与法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度ではコロナの影響により実験に関連する消耗品の支出が予定より少なく、2022年度使用額が生じた。2023年度では、TACの前向き観察研究による新たな遺伝子多型解析やFACSにおいて使用予定のため、その実験に関連する消耗品購入に充当する予定である。
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