研究課題
本研究では、PXRによる肝がん進行抑制作用の分子機序を明らかにすることを目的に、PXRによる肝星細胞の活性化抑制作用について調べた。薬物処置によりPXRの発現量を調節可能な肝星細胞株hPXR-LX2細胞を作製し、その培養上清の肝がん細胞由来HepG2細胞のEMTへの影響を、ビメンチン遺伝子のプロモーターを用いたレポーターアッセイで調べた。LX2細胞培養上清処置によりHepG2細胞のEMTが誘導されたが、PXRを活性化させたhPXR-LX2細胞の培養上清ではHepG2細胞のEMTは誘導されなかった。先行研究において、PXRは肝星細胞の活性化型への形質転換を抑制することを見出した。そこで、この分子機序を明らかにするため、hPXR-LX2細胞において、星細胞の形質転換に関与することが知られているTGFβ/SMADシグナル、ペリオスチン(POSTN)/インテグリンシグナル関連の遺伝子発現を定量的逆転写PCRにより調べた。その結果、PXR活性化によりPOSTN のmRNAレベルが顕著に抑制されることが示された。さらに、POSTN遺伝子のプロモーターを用いたレポーターアッセイにおいて、PXRによるレポーター活性の抑制が認められた。一方で、SMAD応答配列を用いたレポーターアッセイでは、PXRはむしろレポーター活性を増加させた。hPXR-LX2細胞株にTGFβ1及びPOSTNの組換えタンパク質を処置したところ、POSTN処置によりTGFβ1依存的な星細胞活性化マーカーFN1やCOL1A1 mRNAレベルの増加が増強された。一方で本細胞におけるPXRの活性化は、これらmRNAレベルの増加を顕著に抑制した。以上の結果から、PXRの活性化はPOSTNの転写及びその機能を抑制することで肝星細胞の形質転換を抑制し、これにより肝がん細胞のEMTを抑制することが示唆された。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 24 ページ: 3953~3953
10.3390/ijms24043953
Food and Chemical Toxicology
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