研究課題/領域番号 |
21K15327
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
月川 健士 崇城大学, 薬学部, 助教 (60772027)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一酸化窒素 / EPR効果 / 高分子化抗がん剤 / 抗がん効果 / アルブミン |
研究実績の概要 |
本研究では、高分子化抗がん剤のがん組織集積性や抗がん効果の増強を目的として、申請者グループ開発のユニークな一酸化窒素(NO)徐放剤(NPB)と、がん指向性に優れるヒト血清アルブミン(HSA)を結合させた、「がん指向性NO徐放剤(HSA-NPB)」の開発に取り組んでいる。このHSA-NPBは、がん組織にNOを選択的かつ持続的に作用させることで、がん組織の血流の持続的な増大と、それによる薬物集積増強効果を企図した薬剤である。高分子化抗がん剤と併用するだけで、そのがん組織集積性や治療効果を増強する、新規がん治療戦略(HSA-NPB併用療法)の開発を目指す。 本年度は主に、HSA-NPBの作製方法や、HSA-NPBからのNO放出性について検討した。まず、NPBのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化エステルを合成したのち、HSAと水溶液中で反応させることで、HSA-NPBを作製した。HPLCなどを使用した各目的物の確認に時間を要したものの、HSA1分子に対して、NPBが約1分子結合したHSA-NPBを作製することができた。続いて、HSA-NPBからのNO放出性を検討したところ、元のNPBと同様のNO徐放性を確認できた。また、予備試験段階ではあるものの、HSA-NPBをマウスに静脈投与した際には、明らかな毒性は見られなかったことなどを確認しており、今後の検討課題(薬物集積性や治療効果の増強に関する検討)に進むことが可能である。その他、NPB自身の薬理作用についても種々の検討を行った。以上のように、「がん指向性NO徐放剤(HSA-NPB)」の開発について、基礎的な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、HSA1分子に対して、NPBが約1分子結合したHSA-NPBを作製することができ、水溶液中でのNO徐放性を検討した結果、元のNPBと同様のNO徐放性を確認できた。一方で、動物実験においては、HSA-NPBのがん組織へのNO送達能などに関しての詳細な検討には至っていない。これは、HSA-NPB作製条件の検討、HPLCなどを利用した各目的物の確認条件の検討などに時間を要したためである。
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今後の研究の推進方策 |
HSA-NPB作製条件の検討、HPLCなどを使用した各目的物の確認条件の検討などに時間を要したものの、効率的な作製方法は確立できており、今後は動物実験を進めていく。まずは、HSA-NPB投与後のがん組織内のNO濃度の上昇や血流の増大などを検討する。さらには、HSA-NPBを併用した際、がん組織集積性を評価する色素エバンスブルーなどのがん組織への集積量が変化するかどうか評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、HSA-NPB作製条件の検討、HPLCなどを使用した各目的物の確認条件の検討などに時間を要し、動物実験での検討項目を本格的に進めることができなかったため、未使用額が生じた。 次年度に、HSA-NPB投与後のがん組織内のNO濃度測定を含めた動物実験を進めることとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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