研究課題/領域番号 |
21K15340
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
天野 出月 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10765275)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 甲状腺ホルモン / 抑制型転写共役因子 / NCoR / SMRT / 発達障害 / 自閉症スペクトラム障害 |
研究実績の概要 |
甲状腺より産生される、甲状腺ホルモン(TH)は周産期の神経発達に必要不可欠なホルモンの一つである。THは標的臓器細胞に取り込まれ、標的遺伝子のTH応答領域に結合する受容体に結合し、標的遺伝子の発現を転写レベルで制御する。TH非結合時には、抑制型転写共役因子 (NCoR)からなる複合体により転写が抑制され、TH結合時には活性型共役因子により転写が活性化される。しかし、THによる神経系への作用機序、特に転写共役因子による制御機構は未だ不明である。そこで本計画では転写機抑制型共役因子の中枢神経系ノックアウトマウスモデルを作製し、その生理学的意義を明らかにすることが目的である。前年度までに神経細胞特異的な転写抑制型共役因子遺伝子(NCoR1/SMRT)ノックアウトマウスモデルを作製し、これらのマウスが情動や社会行動性の自閉症スペクトラム障害に類似した異常を来すことを見出した。この結果はヒト症例における報告と類似したものであり、発達障害の原因の一つが抑制型転写共役因子にあることを支持するものである。また興味深いことにNCoR1, SMRTノックアウトマウスそれぞれが異なる表現型を示すことも明らかにした。そこで2022年度はこれらの一つの責任領域であることが近年知られている小脳プルキンエ細胞特異的にNCoR1/SMRTをノックアウトしたマウスを作成した。これらのマウスは明らかな協調運動障害を伴わないにもかかわらず、神経細胞特異的ノックアウトマウスと類似した表現型を示した。今年度は本マウスの神経学的、分子生物学的実験によってメカニズムを解析していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、動物モデルの作成を行うことができ、各種の行動実験を遂行することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
甲状腺より産生される、甲状腺ホルモン(TH)は周産期の神経発達に必要不可欠なホルモンの一つである。THは標的臓器細胞に取り込まれ、標的遺伝子のTH応答領域に結合する受容体に結合し、標的遺伝子の発現を転写レベルで制御する。TH非結合時には、抑制型転写共役因子 (NCoR)からなる複合体により転写が抑制され、TH結合時には活性型共役因子により転写が活性化される。しかし、THによる神経系への作用機序、特に転写共役因子による制御機構は未だ不明である。そこで本計画では転写機抑制型共役因子の中枢神経系ノックアウトマウスモデルを作製し、その生理学的意義を明らかにすることが目的である。前年度までに神経細胞特異的な転写抑制型共役因子遺伝子(NCoR1/SMRT)ノックアウトマウスモデルを作製し、これらのマウスが情動や社会行動性の自閉症スペクトラム障害に類似した異常を来すことを見出した。またNCoR1, SMRTノックアウトマウスそれぞれが異なる表現型を示すことも明らかにした。そこで2022年度はこれらの一つの責任領域であることが近年知られている小脳プルキンエ細胞特異的にNCoR1/SMRTをノックアウトしたマウスを作成した。興味深いことにこれらのマウスは明らかな協調運動障害を伴わないにもかかわらず、神経細胞特異的ノックアウトマウスと類似した表現型を示した。今年度は本マウスの神経学的、分子生物学的実験によってメカニズムを解析していく。特に小脳プルキンエ細胞における電気生理学的特性の解明と、その分子生物学的メカニズムの解明のためパッチクランプ法を用いた実験とsingle-cell patch-seqを組み合わせた実験を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
小脳プルキンエ細胞特異的にNCoR1/SMRTをノックアウトしたマウスを作成したため、本マウスの神経学的、分子生物学的実験によってメカニズムを解析していく。特に小脳プルキンエ細胞における電気生理学的特性の解明と、その分子生物学的メカニズムの解明のためパッチクランプ法を用いた実験と分子生物学的実験が必要である。それらに必要とする試薬等の購入及び、2023年度に発表予定の学会参加費に使用する予定である。
|