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2022 年度 実施状況報告書

生理的および病的な血管新生におけるペリサイトの機能とその制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K15346
研究機関日本医科大学

研究代表者

石井 智裕  日本医科大学, 先端医学研究所, 助教 (40835427)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード血管新生 / ペリサイト / 血管内皮細胞 / ゼブラフィッシュ / ライブイメージング
研究実績の概要

リサイトは毛細血管を被覆する壁細胞であり,通常時安定な血管構造維持に寄与していると考えられている.一方で,組織が傷害など損傷を受けると,損傷部位が虚血となりこれを解消するために血管新生が誘導される.血管新生は既存血管から新たな血管を形成する現象で,創傷治癒時など生理的条件下では生体の恒常性維持に寄与する.一方,がんなどの病態時では,血管新生による異常血管形成が病態を悪化させることが知られている.血管新生が生体へ相反する作用を有する機構は未だ不明のままであるが,病的血管新生ではペリサイトによる被覆が少ないことが特徴の1つであり,ペリサイトの機能が生理的血管新生に重要であると考えられている.しかしながら血管新生におけるペリサイトの役割は未だ不明のままである.そこで申請者らは,血管新生過程におけるペリサイトの役割を明らかとするため,1年目で任意のタイミングでペリサイトを除去できるゼブラフィッシュを樹立し,アブレーションの条件を確立した.さらに,成魚皮膚血管をライブで観察するイメージング手法を確立した.そこで2年目では,ペリサイトをなくした後に血管新生を誘導し,その影響を解析した.その結果,ペリサイトをなくした後に血管新生を誘導すると,内皮細胞の過剰な出芽と伸長方向の異常が観察された.以上のことから,ペリサイトは血管新生を積極的に制御することが示唆された.そこで,その制御メカニズムを明らかとするために,皮膚組織から内皮細胞を採取し,トランスクリプトーム解析を実施することにした.現在,ゼブラフィッシュ皮膚組織から内皮細胞をFACSにより採取する条件検討を行なっている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2年目では,まずペリサイトをなくした際の血管新生過程をライブで観察したデータを詳細に解析してきた.その結果,ペリサイトがないと内皮細胞の出芽が増加し,血管枝の伸長方向が異常となり,最終的に血管長が増加した.そこで,内皮細胞の増殖能にも影響がある可能性を考え,EdUにより増殖細胞をラベルし解析を行なった.その結果,ペリサイトをなくすとEdU陽性の内皮細胞が増加し,ペリサイトが内皮細胞の増殖能を制御することが示唆された.また,ライブイメージングにより観察されたこれらの現象が如何にして制御されているかを明らかとするために,成魚皮膚から内皮細胞を単離し,トランスクリプトーム解析を実施する実験系の確立に着手した.まず,成体ゼブラフィッシュの皮膚組織から内皮細胞をFACSにて単離するために,組織分散条件及びセルソーティングの検討を行なってきた.まだ条件検討の段階であるが,皮膚組織の分散条件が概ね確立してきている.また,この実験を実施するために多数のゼブラフィッシュを用意する必要があり,繁殖及び飼育を継続的に実施している.また,病的血管新生におけるペリサイトの役割を知るために,免疫不全ゼブラフィッシュで内皮細胞及びペリサイトを可視化した魚を樹立した.この魚へ腫瘍を移植する実験を実施してきたが,腫瘍細胞の移植条件に苦戦しており,実験条件のさらなる検討を重ねている.

今後の研究の推進方策

3年目では,ライブイメージングにより明らかとなった生理的血管新生過程におけるペリサイトの役割について論文としてまとめる.さらに,ペリサイトによる血管維持機構を理解するために,成魚皮膚からの内皮細胞の単離条件を確立し,トランスクリプトーム解析の実験系を確立する.ペリサイトをなくした個体から内皮細胞を採取し,正常個体の遺伝子発現と比較することで,ペリサイトが如何にして血管機能を維持しているかについて候補となる分子やパスウェイを同定する.さらに,重要と思われる遺伝子や分子を選定し,これらの機能を阻害するノックアウトフィッシュ及びトランスジェニックフィッシュを作成する.この遺伝子改変フィッシュを用い,着目した遺伝子や分子がペリサイトによる血管機能に重要であるか検証実験を行う.さらに,病的血管新生モデルの確立についても検討を進めていく.免疫不全ゼブラフィッシュへの腫瘍細胞の移植条件が未確立であるが,条件の確立を目指す.

次年度使用額が生じた理由

FACSによる細胞単離の条件検討が思うように進まず,トランスクリプトーム解析のための予算を執行できなかった. 昨年度の実験経験から, 大方の目処をつけることができたので,今年度は計画通りNGSデータ解析を実施する予定である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Novel regulatory mechanisms underlying angiogenesis during wound healing revealed by fluorescence-based live-imaging in zebrafish2023

    • 著者名/発表者名
      Yuge Shinya、Ishii Tomohiro、Noishiki Chikage、Fukuhara Shigetomo
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 174 ページ: 5~12

    • DOI

      10.1093/jb/mvad024

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Mechanical loading of intraluminal pressure mediates wound angiogenesis by regulating the TOCA family of F-BAR proteins2022

    • 著者名/発表者名
      Yuge S, Nishiyama K, Arima Y, Hanada Y, Oguri-Nakamura E, Hanada S, Ishii T, Wakayama Y, Hasegawa U, Tsujita K, Yokokawa R, Miura T, Itoh T, Tsujita K, Mochizuki N, Fukuhara S
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 2594

    • DOI

      10.1038/s41467-022-30197-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 毛細血管の維持および血管新生制御におけるペリサイトの役割とその制御機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      石井智裕,弓削進弥,野一色千景,安藤康史,福原茂朋
    • 学会等名
      日本血管生物医学会学術集会
  • [図書] 血管・リンパ管の機能制御と疾患メカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      伊東史子,福原茂朋
    • 総ページ数
      231
    • 出版者
      科学同人
    • ISBN
      978-4-7598-1735-5

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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