研究課題
本研究では、1) パーキンソン病既存薬amantadineのKATP(Kir6.1/Kir6.2) チャネルを介したメカニズム検討、2) KATPチャネル欠損(Kir6.1+/-、Kir6.2-/-)マウスに神経毒 MPTP投与によってパーキンソン病(PD)を誘発させ行動薬理学的アプローチによるパーキンソン病発症機序解明を行った。「研究課題1」: 申請者は、既存のPD治療薬であるamantadineの新規作用機序として、KATP (Kir6.1/Kir6.2) チャネルの閉口を介した細胞内Ca2+濃度の上昇による神経細胞の興奮性亢進作用を見出した。さらに、Ca2+イメージング法を用い、amantadineのEC50が100uM前後であることを同定した。「研究課題2」:KATP チャネル欠損マウスに神経毒 MPTP投与によってパーキンソン病を誘発させると、Kir6.1欠損マウスではPD様症状(運動機能障害)の重症化が野生型マウスと比較して顕著であった一方で、Kir6.2欠損マウスでは発症が認められなかった。次に、免疫組織化学染色法による黒質緻密部におけるドーパミン神経細胞の発現を観察したところ、MPTPを投与したKir6.1欠損マウスではドーパミン神経細胞の著しい脱落が確認されたが、MPTPを投与したKir6.2欠損マウスではドーパミン神経細胞の脱落は認められなかった。さらに、MPTPを投与したKir6.1欠損マウスでは、amantadine投与によるPD様症状の改善効果は認められなかった。今後は、amantadineによるKATPチャネル閉口作用について詳細に検証するとともに、PD様症状を惹起したKATP チャネル欠損マウスの病態関連脳領域における細胞内シグナル伝達経路について解析する。
1: 当初の計画以上に進展している
MPTPを投与したKATP チャネル欠損(Kir6.1+/-、Kir6.2-/-)マウスでは、PD様症状の発症並びに黒質緻密部におけるドーパミン神経細胞の脱落に違いが見られた。これらのことは、KATPチャネルによって細胞死が制御されていることを示唆しており、今後KATPチャネルによる細胞死メカニズム制御機構の解明に繋げることができる。
今後の計画として、行動薬理学・免疫組織化学底解析によりKir6.1/Kir6.2欠損マウスではパーキンソン病発症メカニズムに差異を見出したことを背景とし、本年度は線条体-黒質緻密部における細胞内シグナル機序について明らかにする。1. マイクロダイアリシス法を用いて、Kir6.1/Kir6.2欠損マウスの線条体のシナプス間隙におけるドーパミン量について測定する。2. MPTP処置Kir6.1/Kir6.2欠損マウスの黒質緻密部におけるドーパミン神経の脱落のメカニズムについて免疫ブロット法ならびに免疫組織化学的手法により検討する。3. 電気生理学的手法を用いて、Kir6.1/Kir6.2過剰発現細胞におけるamantadineによるKATPチャネル閉口作用について検討する。
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Molecular and Cellular Neuroscience
巻: 117 ページ: 103680
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Journal of Personalized Medicine
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