研究課題
軟骨無形性症は内軟骨性骨化の異常により長管骨の成長障害をきたす難病のうちで最も頻度が高い疾患であり、FGFR3遺伝子の点変異が原因であると考えられている。申請者はこれまでに軟骨組織に対する新たな遺伝子治療法を探索し、自己増幅型RNA(saRNA)とナノ脂質粒子遺伝子導入法を用いたマウス軟骨組織への遺伝子導入法を世界に先駆けて成功した。そこで本研究課題では、①自己増幅型RNAを用いた骨組織への遺伝子発現制御法の確立を行い、②自己増幅型RNAを用いた軟骨無形性症の治療法開発研究を行う。その成果を、自己増幅型RNAを用いた治療薬開発のための研究基盤とする。本年度はまず、変異型FGFR3ノックダウン用RNAの設計とFGFR3遺伝子変異軟骨細胞への効果を検討した。軟骨無形性症患者の約98%はG380R点変異であるため、その変異遺伝子のみを抑制するsaRNAを設計ソフトにより作製した。設計したsaRNAを軟骨無形性症モデルマウス(FGFR3 G380R Tgマウス) から採取した軟骨細胞に導入し、導入細胞のRNAを回収し、野生型FGFR3と変異型FGFR3に対して特異的なPCRにより変異型FGFR3のみがノックダウンされるか検討した。変異型FGFR3ノックダウン用saRNAをFGFR3 G380R Tg軟骨細胞に導入した結果、変異型FGFR3のみが有意に発現低下し、野生型FGFR3の発現は有意な変化は認められなかった。また、変異型FGFR3ノックダウン用saRNAを導入したFGFR3 G380R Tg軟骨細胞は細胞の分化が野生型細胞と同等に回復していた。
2: おおむね順調に進展している
研究の要となる変異型FGFR3遺伝子の発現を抑制することのできる自己増幅型RNAを設計することができた。また、そのsaRNAを導入したFGFR3 G380R Tg軟骨細胞は細胞の分化が野生型細胞と同等に回復していた。これらの成果は当初予定していた研究計画に沿ったものであり、研究課題は順調に進展しているといえる。しかし、申請者自身の自己都合により、本年度から別の研究機関へ移動することになった。その移動手続きのため、今年度予定していた研究計画を未だ着手できていないのが現状である。これらの状況を鑑みて、本研究課題の進行状況を(2)と判断した。
FGFR3 G380R Tg軟骨細胞にsaRNAを導入することで、変異遺伝子の発現を抑制し、分化を回復することができたため、今後は軟骨無形性症患者由来ヒトiPS細胞をRIKEN BRCから入手し、iPS細胞にノックダウン用saRNAが導入可能か検討する。また、導入したiPS細胞の軟骨細胞への分化がマウスの細胞と同様に回復するか検討する。また、FGFR3 G380R TgマウスにsaRNAを導入し、骨格の表現型が回復するか検討する予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 備考 (3件)
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