研究課題
申請者はこれまでに軟骨組織に対する新たな遺伝子治療法を探索し、自己増幅型RNA(saRNA)とナノ脂質粒子遺伝子導入法を用いたマウス軟骨組織への遺伝子導入法を世界に先駆けて成功した。そこで本研究課題では、①自己増幅型RNAを用いた骨組織への遺伝子発現制御法の確立を行い、②自己増幅型RNAを用いた遺伝性骨疾患の治療法開発研究を行う。その成果を、自己増幅型RNAを用いた治療薬開発のための研究基盤とする。本年度は申請者の所属研究機関を変更したこともあり、これまで使用していた研究試料の一部は使用が難しくなった。そのため、研究対象とする変異型遺伝子を従来のFGFR3遺伝子から、もう一つ予定していた進行性骨化性線維異形成症(FOP)の原因遺伝子であるACVR1変異遺伝子へと変更することとした。本年度はまず、変異型ACVR1ノックダウン用RNAの設計とACVR1遺伝子変異筋芽細胞への効果を検討した。FOP患者の原因遺伝子であるACVR1R206H点変異のみを抑制するsaRNAを設計ソフトにより作製した。設計したsaRNAをACVR1R206H変異を導入したC2C12筋芽細胞に導入し、導入細胞のタンパク質を回収し、変異型ACVR1のみがノックダウンされるか検討した。変異型ACVR1ノックダウン用saRNAをACVR1R206H変異型C2C12細胞に導入した結果、変異型ACVR1のみが有意に発現低下し、野生型ACVR1の発現は有意な変化は認められなかった。また、変異型ACVR1ノックダウン用saRNAを導入したACVR1R206H変異型C2C12細胞を軟骨細胞へ分化させた結果、変異型ACVR1ノックダウン用saRNAを導入した細胞では軟骨細胞への分化が抑制されたいた。
3: やや遅れている
申請者自身の自己都合により、昨年度から別の研究機関へ移動することになった。その際に、使用を予定していた遺伝子改変マウスなどが使用できない状態が続いていたため、研究対象とする遺伝子をFGFR3から、別に予定していたACVR1へと変更した。そのため変異型ACVR1遺伝子を抑制するsaRNAを新たに設計することから始めたため、当初の予定から遅れている状況である。研究の要となる変異型ACVR1遺伝子を抑制するsaRNAを設計し、それを利用して変異型ACVR1遺伝子の発現を抑制し、C2C12細胞の軟骨細胞への分化を抑制することができたが、研究状況の遅れを鑑みて、本研究課題の進行状況を(3)と判断した。
ACVR1 R206H変異導入C2C12細胞にsaRNAを導入することで、変異遺伝子の発現を抑制し、軟骨細胞への分化を抑制することができたため、今後はFOP患者由来ヒトiPS細胞をRIKEN BRCから入手し、iPS細胞にノックダウン用saRNAが導入可能か検討する。また、導入したiPS細胞の軟骨細胞への分化がマウスの細胞と同様に回復するか検討する。また、ACVR1 R206H TgマウスにsaRNAを導入し、骨の異常形成の表現型が回復するか検討する予定である。
昨年度は別の研究機関へ移動があったため、研究計画が予定よりも遅れているため、研究費の使用も予定よりも少なくなった。また研究機関の変更に伴い、当初、使用を予定していた遺伝子改変マウスの使用が難しくなり、移動後の研究機関で新たに遺伝子改変マウスの入手を計画している。その遺伝子改変マウスの入手のために、予定よりも多くの予算使用を計画している。そのため、当初予定していた今年度の実験用動物費300000円に加えて、次年度使用額分を実験動物の購入、飼育費に充てることを計画している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
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