研究課題
2022年度の研究において、AMPK活性化剤であるresveratrolが潰瘍性大腸炎様所見並びにうつ様行動に対して予防効果を示すことを見出した。申請者は、海馬AMPKの活性化が神経新生を促し、抗うつ作用を発現することを報告している(Neuropharmacology. 2019, 150:121-133)。従って、resveratrolの潰瘍性大腸炎様所見並びにうつ様行動に対して予防効果のメカニズムに関してAMPKシグナル経路並びに海馬歯状回での神経新生に焦点をあてて検討を行った。海馬及び直腸におけるp-AMPK 並びにLC3Ⅱ/LC3Ⅰの発現レベルが有意に減少し、p-p70S6K並びにp62が有意に増加していたことから、脳腸オートファジー機能の低下が示唆された。また、DSS処置マウスの海馬においてIba1陽性細胞数や細胞傷害性ミクログリア(M1型)のマーカーであるiNOS、炎症性サイトカインであるIL-1β、IL-6、TNF-α、アポトーシスのマーカーであるcleaved caspase-3の発現レベルの有意な増加が認められ、一方で海馬歯状回における新生神経細胞数が低下していたことから、ミクログリアが細胞傷害型に分極することによって炎症性サイトカインの生成が促進し、その結果アポトーシスが誘導されることによって神経新生が低下している可能性も示唆された。さらに、これらの変化はresveratrolの投与によって改善した。以上より、潰瘍性大腸炎並びにうつ様行動の両方に脳腸内AMPKシグナル経路が密接に関与しており、うつ病を併発した潰瘍性大腸炎患者に対する新たな治療法を考究する上での共通標的になり得ると考える。
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