研究実績の概要 |
本研究では、同一サンプル由来の小脳、視床下部、側頭葉皮質の3つの異なる脳領域から抽出したRNAを用いてロングリード遺伝子発現解析を行った。(N=4×3部位、12サンプル)。その結果、全サンプルあわせて66,860個のアイソフォームが同定され、それらは14,382の既知の遺伝子と52の新規の遺伝子に由来するものであることがわかった。3つの脳部位のうち2か所以上で発現しているアイソフォームに絞っても、その半数以上がこれまでに登録のない新規のアイソフォームであった。 最終年度は、特に各々の部位において、遺伝子全体の発現量は変わらなくとも、発現している主要なアイソフォームが異なる遺伝子に着目して解析を行った。このような傾向が最も強い遺伝子はGAS7(Growth Arrest Specific 7)であり、特に視床下部、側頭葉皮質では長いアイソフォームを、小脳では短いアイソフォームを発現していた。GAS7以外にも同様に脳の部位間で異なる主要なアイソフォームを発現する遺伝子にどのような機能をもつものが多いかを探索したところ、細胞の突起の形成に関わるものが多いことが示唆された。さらに上述のように同じ遺伝子から脳の部位によって異なるアイソフォームが発現するメカニズムに迫るため、DNAのメチル化に着目した解析を行い、特に転写開始点が異なるアイソフォーム同士において、その発現メカニズムにDNAのメチル化が関与している可能性が示唆された。
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