研究課題/領域番号 |
21K15369
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江口 貴大 東京大学, 医科学研究所, 助教 (60845056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋肥大・萎縮シグナル |
研究実績の概要 |
骨格筋は筋繊維(筋管)を主な構成単位とする、呼吸や運動機能に必須の器官であり、その質量低下(筋萎縮)は筋力低下に直結する。異常な筋萎縮は生活の質(QOL)の低下につながるため、骨格筋量の制御メカニズムの解明とその知見に基づく筋萎縮の治療技術の創出は重要な課題である。 骨格筋量の制御においてはCa2+を介したシグナルの重要性がこれまで示されてきたが、その実態については不明な点が多く残されている。Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase II (CaMKII)はCa2+とcalmodulinの複合体により活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、当該キナーゼのアイソフォームであるCaMKIIbは筋萎縮に関与していることが示唆されていた。そこで、本研究では、骨格筋量および筋力に対するCaMKIIbの役割を明らかにするために、野生型、および変異型CaMKIIbを発現するアデノ随伴ウィルス(Adeno-associated virus: AAV)を作出し、成獣マウスの骨格筋に投与したところ、変異型CaMKIIb(K43M)を発現するAAVの投与が筋重量の増加、および筋力の増強を誘導することを見出した。それゆえ、本研究成果はCaMKIIb、およびその類縁分子が骨格筋量、ひいては筋力を制御するシグナル分子として機能することを提示するとともに、CaMKIIを介したシグナルが筋萎縮への治療標的となることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、CaMKIIを介したシグナルへの介入が様々な筋萎縮への治療技術となる可能性が示唆された。また、当該シグナルの実態解明の基盤構築を進め、筋萎縮・肥大に関連する分子の同定に必要な予備的な解析を進めた。また、筋萎縮を誘導する系の最適化を進め、予備的な治療実験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は骨格筋量制御におけるCaMKIIb、およびその類縁分子を介したシグナルの解明を試みる。また、様々な疾患モデルにおける筋萎縮とCaMKIIの関連を解析する。さらに、CaMKIIを介したシグナルを制御することにより、様々な筋萎縮への治療介入が可能かどうかマウスモデルを用いて検討する。
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