研究課題
本研究は新規N6-methyladenosine(m6A)RNA修飾機構が赤芽球分化において果たす役割の解明を目的としている。本年度はm6A RNA修飾酵素METTL16の赤芽球特異的欠損マウスにおいて、赤血球造血異常が生じる機構について解析を行った。この結果、METTL16を欠損した赤芽球においては微小核が高頻度に存在していることを見出した。微小核はDNA損傷の結果生じるものであることから、METTL16欠損下でDNA修復異常、もしくはDNA損傷の増加が生じている可能性が示唆された。次にMETTL16がDNA修復・損傷を調節する分子機構について、特にRNA修飾の観点から検討した。METTL16により修飾されるm6Aの部位を網羅的に同定するため、METTL16欠損赤芽球を用いてMeRIP-seq解析を行った。この結果、特にDNA修復関連遺伝子(Fancm, Brca2など)のmRNA上にMETTL16により修飾されるm6Aが多数存在することが明らかとなった。同定されたDNA修復関連遺伝子群の発現はMETTL16欠損下で著明に低下しており、このことがDNA損傷が生じる原因と考えられた。次に、METTL16により修飾されるm6Aの遺伝子発現への影響を検討するため、DNA修復関連遺伝子のmRNA上のm6A修飾部位に変異を加えたルシフェラーゼレポーターを作出し検討を加えたところ、m6A修飾部位を変異させることによりルシフェラーゼ活性が低下することから、METTL16によるm6A修飾は遺伝子発現を正に調節していることが示唆された。以上のことから、METTL16は赤芽球においてDNA修復関連遺伝子群の発現をm6A修飾により調節することで、ゲノム安定性の維持に寄与する因子であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
赤芽球特異的METTL16欠損マウスを解析し、METTL16を欠損した赤芽球においてDNA損傷が生じていることを明らかにすることができた。またMETTL16の標的mRNA群を網羅的に同定し、特にDNA修復関連遺伝子にm6A修飾が多数存在することを見出すことができた。
今後はMETTL16欠損下でのDNA損傷により赤芽球分化障害が起こる機序について、さらに多角的に検討を加える予定である。
当初の計画を変更し、次年度に予定していた実験の一部を先に本年度実施し、本年度に予定していた実験の一部を次年度に計画しているため次年度使用額が生じたが、次年度早期に使用する予定となっているため全体の使用計画に大きな変更はない。
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Science Signaling
巻: 15 ページ: 1~19
10.1126/scisignal.abm5011
Life Science Alliance
巻: 5 ページ: -
10.26508/lsa.202101067