研究課題/領域番号 |
21K15375
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
牧野 舞 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10736870)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リアノジン受容体 / 選択的スプライシング / カルシウムシグナル / 心筋 |
研究実績の概要 |
リアノジン受容体(RyR)は小胞体内腔から細胞質へのCa2+の放出を担うCa2+チャネルである。主に心筋細胞で発現する2型RyR(RyR2)にはexon 75領域を含む「心筋型」とexon 75領域を欠く「膵β細胞型」という組織特異的選択的スプライシングバリアントが存在する。これはRyR2遺伝子のintron 75のスプライシング開始配列(スプライスドナー配列)が通常の「gt」ではなく「gg」であることに起因すると考えられた。これまでの研究(2019~2021年度若手研究)で,膵β細胞型RyR2を発現する膵β細胞においてCRISPR/Cas9ゲノム編集技術によりスプライスドナー配列を「gt」へ変異させ心筋型RyR2を発現させるとインスリン生合成機能の顕著な低下がみられることを見出した。本研究では,RyR2のスプライス型(発現型)の変化が心機能へどのような影響を及ぼすのかを調べ,RyR2の組織特異的スプライシングバリアントの存在意義の解明を目指す。 まず,ゲノム編集技術によりRyr2遺伝子のintron 75のスプライスドナー配列を「gg」から「gt」へ変異させたヘテロ改変マウスを作製した。その後ヘテロ改変マウス同士の交配を進め,ホモ改変マウスの獲得に成功した。ホモ改変マウスの生育状態や繁殖能力などは野生型マウスとほぼ同等であった。また,心臓の組織像について野生型(「gg」)とホモ改変型(「gt」)で形態組織上顕著な差はみられなかった。今後は両遺伝子型マウスに対し運動負荷試験や薬剤投与実験などを行い,in vivoでの心機能の評価を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR/Cas9システムを用いてRyr2遺伝子のintron 75のスプライスドナー配列を「gg」から「gt」へ変異させたゲノム改変マウスの作製を試み,ホモ改変マウスの獲得に成功した。Ryr2のスプライス型(発現型)の変化による心筋機能への影響をin vivoで評価する段階へと研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では,CRISPR/Cas9システムを用いてRyr2遺伝子のintron 75のスプライスドナー配列を「gg」から「gt」へ変異させたゲノム改変マウスを作製した。ホモ改変マウスでは,野生型マウスと比較して生育状態や繁殖能力,心臓の組織像に顕著な差はみられなかった。 今後の方策として,野生型及びゲノム改変マウスに対し運動負荷試験や薬剤投与実験などを行い,in vivoでの心機能の評価を引き続き進めていく予定である。また,膵β細胞型RyR2の発現組織の一つである神経細胞においてRyR2のスプライス型の変化による影響を受けている可能性が考えられるため,自律神経系を通じた心機能への影響についても評価を進めることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加した国内外の学術会議はCOVID-19のパンデミックの影響によりオンラインでの開催だったため,旅費が未使用となった。また,ゲノム改変マウスのジェノタイピングなどに使用した試薬類やプラスチック製品などは在庫分を活用し実施することができたため,物品費に残金が生じた。 次年度は,当該年度に引き続き作製したゲノム改変マウスの維持や機能解析実験に必要な飼育費や試薬類等の費用を支出する予定である。また,ゲノム改変マウスの機能解析により得た研究成果を国内外の学術会議で発表し(第95回日本生化学会大会(2022年11月9~11日),IDF Congress 2022(2022年12月5日~8日)に演題登録予定),学術論文を投稿することを計画しており,これに必要な英文校閲費,論文投稿費・オープンアクセス費を次年度に使用する予定である。
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