研究課題
リアノジン受容体(RyR)は小胞体内腔から細胞質へのCa2+の放出を担うCa2+チャネルであり,主に心筋細胞で発現する2型RyR(RyR2)にはexon 75領域を含む「心筋型」とexon 75領域を欠く「膵β細胞型」という組織特異的選択的スプライシングバリアントが存在する。これはRyR2遺伝子のintron 75のスプライシング開始配列(スプライスドナー配列)が通常の「gt」ではなく「gg」であることに起因すると考えられた。これまでの研究(2019~2020年度若手研究)で,膵β細胞型RyR2を発現する膵β細胞においてCRISPR/Cas9ゲノム編集技術によりスプライスドナー配列を「gt」へ変異させ心筋型RyR2を発現させるとインスリン生合成機能の顕著な低下がみられることを見出した。本研究では,RyR2のスプライス型(発現型)の変化が心機能へどのような影響を及ぼすのかを調べ,RyR2の組織特異的スプライシングバリアントの存在意義の解明を目指す。CRISPR/Cas9を用いRyR2 intron 75のスプライスドナー配列を「gt」に変異させたホモ改変マウスでは,野生型マウスと比較し生育状態や心臓の組織像に顕著な差はみられなかった。そこで,スプライス型の変化の影響をより広く検証するためにRyR2を介するCa2+シグナルが関与するインスリン分泌能について調べた。野生型マウス及びホモ改変マウスより単離した膵島に対しグルコース刺激実験を行ったところ,野生型と比較しホモ改変マウス由来膵島では高グルコース添加による分泌インスリン量の増加はみられなかったことから,グルコース応答性が低下している可能性が示唆された。今後は,運動負荷試験などによる心機能評価やグルコース負荷試験などによるインスリン分泌能評価などを行い,スプライス型の変化が及ぼす影響についてin vivoでの検証を進める。
3: やや遅れている
In vivoでの機能評価実験に供する野生型及びホモ改変型の雄マウスの必要数獲得のための繁殖に時間を要し,当該年度中にin vivoの実験を進めることができず,全体の実験の行程に遅延が生じている。
野生型マウスとゲノム改変マウスとでは生育状態や心臓の組織像に顕著な差は認められなかったため,スプライス型の変化の影響をより広く検証するためにRyR2を介したCa2+シグナルにより惹起される機能のうちインスリン分泌能について検証を進めている。今後は運動負荷試験などによる心機能評価やグルコース負荷試験などによるインスリン分泌能評価などin vivoでの機能解析実験を実施し,得られた研究成果を学術論文にまとめ発表する予定である。
実験の進行の遅れにより当初演題登録を予定していた国際会議に参加しなかったため,旅費の大部分が未使用となった。また,実験に使用したプラスチック製品などは在庫分を活用し実施することができたため,物品費に残金が生じた。次年度は,当該年度に引き続き作製したゲノム改変マウスの維持や機能解析実験に必要な飼育費や試薬類等の費用を支出する予定である。また,実験結果を学術論文にまとめ発表するため,これに必要な英文校閲費,論文投稿費・オープンアクセス費を次年度に使用する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 23 ページ: ー
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Journal of Cellular and Molecular Medicine
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