研究課題
卵巣癌は最も致死率の高い婦人科がんであり、本邦においてその罹患率と粗死亡率は漸増傾向にある。しかしながら自覚症状に乏しく早期診断法が確立されていないため、約75%が進行癌として診断される。標準治療として外科手術と化学療法が併用されるが、半数以上の症例が再発し、再発例の5年生存率は約20%に留まる。分子標的治療が実用化されて20年以上経過してなお、卵巣癌においては肺癌や乳癌におけるEGFRやHER2のような腫瘍マーカーと治療戦略が一対一対応する理想的な分子標的が同定されていない。細胞表面タンパク質には、受容体型チロシンキナーゼなど増殖や浸潤など腫瘍悪性形質を規定する種々の細胞内シグナルの最上流に位置する分子が多く含まれる、薬剤の細胞膜透過性を考慮する必要がなく抗体療法などの治療標的としやすいなど、がんの診断・治療標的候補として有望な分子群が濃縮されている。細胞表面に分布するタンパク質を網羅的に同定サーフェソーム解析法は、近年がんの新規診断マーカーの探索や免疫治療の標的を同定するための手法として用いられている。しかし実際にがん細胞表面のタンパク質を同定した報告は少ない。そこで本研究では、卵巣癌の約半数を占める漿液性がんに焦点を絞り、以下の要領で組織診断や治療標的として有用な標的分子の探索を施行した。1) 癌特異的に発現する細胞表面タンパク質をプロテオミクスにより網羅的に同定した。2) 同定された分子中から「正常組織における発現が殆どなく、かつ詳細未解明のタンパク質」に着目し、標的特異的に反応するモノクローナル抗体を開発した。3) 卵巣癌患者の手術検体を用いて候補分子の診断・予後マーカーとしての有用性を検証した。4) 卵巣癌における標的タンパク質の機能を解析するため、標的タンパク質の安定過剰発現株を作製し、増殖能、遊走能、転移能を評価した。
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