研究課題/領域番号 |
21K15387
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松村 舞依 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50812997)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EGFR変異肺腺癌 / 微小乳頭状亜型 / 全エクソーム解析 / バイオインフォマティクス解析 / MUC21 |
研究実績の概要 |
我々の研究ではこれまでに、EGFR変異を有する肺腺癌(以下、EGFR肺腺癌)の悪性度が微小乳頭状亜型により規定されていることを明らかにした。更に同一腫瘍から微小乳頭状成分と非微小乳頭状成分をマイクロダイセクションで採り分け、次世代シーケンサーによる全エクソン解析を行い、微小乳頭状成分のみに起こっている遺伝子変異を同定、特に高悪性化に関連すると予想される20個の遺伝子からなる「高悪性度EGFR肺腺癌パネル」を作成した。このパネルを用いて、候補遺伝子の変異が①本当に微小乳頭状成分に特異的な変異であるのか、②EGFR肺腺癌の悪性度、すなわち増殖活性・脈管侵襲性や予後に相関するのかを検証する予定である。この研究により、EGFR肺腺癌の高悪性度化に関わる主要な後発変異を同定し、新規の予後予測マーカーや分子標的指標の確立に繋げたい。 当該年度は、切除材料(外科症例)のEGFR肺腺癌凍結検体から、微小乳頭状成分(20例)と非微小乳頭状成分(10例)を切り分け、この30症例に対して候補遺伝子のCDS領域をターゲットにした変異解析(amplicon panel sequence )を行った。その結果、微小乳頭状成分が多く含まれるクラスターに、p53をはじめとする複数の遺伝子変異がより多く含まれていること、またこれらの遺伝子変異を有するクラスターは、脈管侵襲等の予後不良因子を多く含むことが示された(松村舞依 他, 日本病理学会学術総会, 2022年)。このことから、我々の作成した「高悪性度EGFR肺腺癌パネル」の有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、切除材料(外科症例)のEGFR肺腺癌凍結検体から、微小乳頭状成分(20例)と非微小乳頭状成分(10例)を切り分け、この30症例に対して候補遺伝子のCDS領域をターゲットにした変異解析(amplicon panel sequence )を行った。その結果、微小乳頭状成分が多く含まれるクラスターに、p53をはじめとする複数の遺伝子変異がより多く含まれていることが示された。これらの遺伝子変異について、生検材料(内科症例)での検討を試みていたが、次世代シーケンスを行うのに充分なDNA量を得られる検体が少なく、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
外科検体を用いた「高悪性度EGFR肺腺癌パネル」の検証では、微小乳頭状成分に固有の遺伝子変異までは同定出来なかったこと、また小さい生検材料(内科症例)でのDNA抽出が難しいことから、今後は生検材料(内科症例)に対象を拡張するのではなく、新技術である「Visium 空間的遺伝子発現解析」を用いて、組織像を対比させることで、微小乳頭状成分と非微小乳頭状成分それぞれの遺伝子発現パターンを解析する方針とした。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年度は、外科検体でのamplicon sequence結果を用いた「高悪性度EGFR肺腺癌パネル」の検証に手間取り、次の実験に進むことができなかったため、物品費の執行が滞り、残額が生じた。 (使用計画) 次年度は、「Visium 空間的遺伝子発現解析」などに物品費を支出する予定である。
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