研究課題/領域番号 |
21K15388
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
坂根 佳緒璃 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00833469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 唾液腺腺様嚢胞癌 |
研究実績の概要 |
唾液腺腺様嚢胞癌に特異的な遺伝子転座として、MYB-NFIB融合遺伝子、MYBL1-NFIB融合遺伝子がある。また、予後不良因子として、NOTCH1遺伝子変異が報告されている。当研究室では2017年に唾液腺腺様嚢胞癌33例においてMYB、MYBL1、NFIBいずれかの遺伝子再構成を約9割認めること、遺伝子学的に6種類に分類できることを同定した。しかし、これら6種類の遺伝子異常の臨床病理学的意義や腺様嚢胞癌の遺伝子異常の全体像は未だ明らかになっていない。 唾液腺腺様嚢胞癌は、稀な腫瘍であることから単一施設での症例収集が困難であり、病理組織診断でその他の唾液腺腫瘍との鑑別に難渋することもある。当研究室では、15施設より症例を収集し中央病理診断を行っているため、正確に診断された腺様嚢胞癌の症例を用いた研究を行っている。 申請者は、唾液腺腺様嚢胞癌171例を、FISH法にてMYB-NFIB、MYB-X、MYBL1-NFIB、MYBL1-X、NFIB-X、X-Xの6群に分類し(X: 未知遺伝子)、この6群と臨床因子の相関や生存率を統計学的に解析し終えた段階にある。また、唾液腺腺様嚢胞癌におけるMYB、MYBL1、NFIB mRNA発現量や免疫染色による蛋白発現量の関連も研究予定であり、6群の臨床病理学的意義を明らかにする。さらにX(未知遺伝子)や新規融合遺伝子の特定も研究中である。 腺様嚢胞癌の予後不良因子を検索するため、まず70例においてNOTCH1遺伝子変異やNOTCH1蛋白発現量を確認し検討した。また、腺様嚢胞癌70例における癌関連50遺伝子パネルを用いた次世代シークエンスによる網羅的遺伝子変異解析を行っており、結果の意義について現在検討中であり、今後症例数を増やしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
唾液腺腺様嚢胞癌の遺伝子異常の詳細な検討は予定通り進行しており、今後学会発表や論文を執筆予定である。
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今後の研究の推進方策 |
唾液腺腺様嚢胞癌の遺伝子異常の全体像を明らかにするため、上記のX(未知遺伝子)を詳細に特定していくのと同時にMYB、MYBL1、NFIBのmRNA発現量、蛋白発現量も確認し相関を検討する。さらに次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子変異解析を行い、予後不良遺伝子について解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、学会発表などのための旅費を使用していないことと、すでに購入済みであるプローブやプライマーを使用していたことにより次年度に使用額が生じた。次年度は、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子変異解析に必要な材料費や、プローブやプライマーを購入予定である。また、学会発表を積極的に行う予定である。
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