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2022 年度 実施状況報告書

肝細胞癌における腫瘍栓形成性脈管侵襲の分子病理機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K15390
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

上野 彰久  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80348755)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード肝細胞癌 / 脈管侵襲 / 腫瘍栓
研究実績の概要

肝細胞癌が腫瘍栓形成性の脈管侵襲を来す機序を解明するため,前年までに,TCGA databaseを用いて,腫瘍栓形成性の脈管侵襲と関連が深いと考えられる "macrovascular invasion"を示す肝細胞癌が示す遺伝子異常,分子異常に関して検討を行い,遺伝子変異の特徴として,RASAL2, ITGA10, MCL1, GJA5といった,細胞増殖や細胞接着に関わる遺伝子の変異の頻度が高いのに対し,TP53, CTNNB1といった多くの肝細胞癌において認められる遺伝子変異の頻度が低いという事を同定した.また,同じく腫瘍栓形成を来すことの多い腎細胞癌と共通したmRNAの高発現を示す分子56ヶを同定し,それらのうち,"macrovascular invasion"群において,EPOの発現が有意に高く, GLYAT, GLYAL1, HAO2の発現が有意に低いことも同定した.当院における2001年から2020年までの肝細胞癌手術検体551症例738結節についての検討では,非ウイルス性肝疾患由来の発癌が増加していることや,非硬変肝由来の発癌が増加し,腫瘍のサイズも増大している事の他に,平均年齢が高齢化している事などもわかった.本年度は,原発性と考えられる肝細胞癌を571結節同定し,これらの病理組織学的因子の検討を行い,脈管侵襲を肉眼的に同定可能なもの(macrovascular invasion)と,組織学的にのみ同定可能なもの(microvascular invasion)とにわけて検討を行ったところ,前者で有意に予後が悪い事が判明した.また,副次的な所見として,原発性肝細胞癌の組織亜型として,硬化型肝細胞癌や脂肪性肝炎様肝細胞癌が経時的に増加傾向にある事もわかり,それらの結果を併せて学会発表を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

今年度も診療業務に割く時間がかなり多く,研究の遂行が遅れてしまった.組織標本作製,デジタルデータ作成,および病理組織所見の検討を行う事はできたが,予定していたqRT-PCRなどをする時間をとるのが難しかった.次年度以降は実験に割く時間をとり,遅れを取り戻す予定であるが,実験に長い時間を要するin vitroの実験などについては施行が難しい可能性が高いため,蛍光多重免疫染色を併用するなど,他の方法を用いた検討に代用することを考えている.

今後の研究の推進方策

①2023年度:まず,肝細胞癌切除検体の凍結検体を用いた,mRNA発現解析による腫瘍栓形成性脈管侵襲に関連する候補分子のqRT-PCRを行う.すでに約150例ほどのmRNAを抽出しているが,可能であればさらに症例を追加して検討する予定である.
②2023-2024年度:①のmRNAの発現解析や免疫染色での発現解析から絞り込まれた候補分子の発現と,病理学的な脈管侵襲,肝内転移の程度との関係や,腫瘍マーカー,画像所見,術後再発・生存などの臨床情報との相関解析を行うことにより,腫瘍栓形成性脈管侵襲に関わる分子の発現について検討を行う.脈管侵襲については,Macrovascular invasion, microvascular invasionに分類したので,それらの違いについても検討する.
③2023-2024年度:類洞血管内皮細胞における分子発現や動脈性血管の腫瘍内分布など,脈管形成機構との関連が考慮される分子について,免疫染色を用いた発現の検討を行う.また,①②で得られた候補分子で免疫染色施行可能な分子を検索し,上記の血管内細胞の分子発現や動脈性血管の分布との対比を,蛍光多重染色を用い,同一切片上でその局在分布を含め解析を行う予定である.
④2024年度:TCGA等の公開データベース等を用いて,①②③で同定された候補分子に関して,腎細胞癌等の他癌腫での発現についても検討を行う予定である.
⑤2023-2024年度:得られた知見を,適宜国内外の学会で発表し,随時原著論文として迅速に報告する予定である.

次年度使用額が生じた理由

本年度も臨床業務に充てる時間が多くなってしまい,臨床検体の標本作製や,それらをデジタルデータ化して,組織形態についての評価は行えたものの,当初予定していたmRNA発現の検討や免疫染色による検討を十分に遂行することができなかったため.
また,学会参加で旅費が発生するものがなく,旅費も使用することがなかったため.
次年度以降は,qRT-PCRや免疫染色を主体とした実験を行う予定でおり,遅れた分の試薬や抗体等の購入を随時行う予定である.また,学会発表等も積極的に行って行く予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Immunovascular microenvironment in relation to prognostic heterogeneity of WNT/β-catenin- activated hepatocellular carcinoma.2023

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Matsuda, Yutaka Kurebayashi, Yohei Masugi, Ken Yamazaki, Akihisa Ueno, Hanako Tsujikawa, Hidenori Ojima, Minoru Kitago, Osamu Itano, Masahiro Shinoda, Yuta Abe, Michiie Sakamoto
    • 雑誌名

      Hepatology Research

      巻: Apr;53(4) ページ: 344-356

    • DOI

      10.1111/hepr.13869

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The spectrum of primary liver cancers: heterogeneity and continuity. A foundation for diagnosis and treatment of cancer.2023

    • 著者名/発表者名
      Komuta Mina、Ueno Akihisa、Sakamoto Michiie
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: Jan 1;77(1) ページ: 10-12

    • DOI

      10.1002/hep.32452

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Immunovascular classification of HCC reflects reciprocal interaction between immune and angiogenic tumor microenvironments.2022

    • 著者名/発表者名
      Kurebayashi Yutaka、Matsuda Kosuke、Ueno Akihisa、Tsujikawa Hanako、Yamazaki Ken、Masugi Yohei、Kwa Wit Thun、Effendi Kathryn、Hasegawa Yasushi、Yagi Hiroshi、Abe Yuta、Kitago Minoru、Ojima Hidenori、Sakamoto Michiie
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: May;75(5) ページ: 1139-1153

    • DOI

      10.1002/hep.32201

    • 査読あり
  • [学会発表] 当院における肝細胞癌の背景因子と画像所見の変化および予後との関連について2023

    • 著者名/発表者名
      津崎 盾哉, 上野 彰久, 田村 全, 眞杉 洋平, 阿部 雄太, 北郷 実, 曽我 茂義, 奥田 茂男, 紅林 泰, 尾島 英知, 坂元 享宇, 陣崎 雅弘
    • 学会等名
      第29回肝血流動態・機能イメージ研究会
  • [学会発表] 慶應義塾大学病院における肝細胞癌手術症例の背景因子と組織学的亜分類の年代による変遷の検討2022

    • 著者名/発表者名
      山﨑誠一郎,上野彰久,眞杉洋平,松田紘典,阿部雄太,林光輝,紅林泰,辻川華子,尾島英知,長谷川康,八木洋,北郷実,北川雄光, 坂元亨宇
    • 学会等名
      第58回日本肝癌研究会
  • [学会発表] 当院における原発性肝癌手術症例の背景因子と組織型の年代による変遷の検討2022

    • 著者名/発表者名
      上野彰久,眞杉洋平,松田紘典,阿部雄太,林航輝,紅林泰,辻川華子,尾島英知,長谷川康,八木洋,北郷実,北川雄光,坂元亨宇
    • 学会等名
      第26回日本肝臓学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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