研究実績の概要 |
肝細胞癌が腫瘍栓形成性の脈管侵襲を来す機序を解明するため,前年までに,TCGA databaseを用いて,腫瘍栓形成性の脈管侵襲と関連が深いと考えられる,macrovascular invasionを有する肝細胞癌における遺伝子異常,分子異常に関して検討を行い,これらにおいて,TP53, CTNNB1といった,多くの肝細胞癌において認められる遺伝子異常の頻度が低いという事とともに,分子発現においては,EPOなどの発現が有意に高く, GLYAT, GLYATL1, HAO2などの発現が有意に低いことを見いだした.また,当院における手術検体の病理組織標本において,脈管侵襲を肉眼的に同定可能なものと,組織学的にのみ同定可能なものとに分けて検討を行ったところ,腫瘍栓形成性脈管侵襲とより関連が深いと考えられる前者において予後が悪い事も見いだした. また,これまでに,当院における2001年から2020年までの原発性肝細胞癌345症例388結節について,背景肝疾患との関連や臨床病理学的因子,予後との関連について検討を行って,非ウイルス性肝疾患由来の発癌や,非硬変肝由来の発癌が経時的に増加していること,硬化型や脂肪性肝炎型といった肝細胞癌の組織亜型が増加傾向にある事,脈管侵襲と関連する組織亜型であるmacrotrabecular massive HCCが予後不良である事,などを見いだし,学会発表を行い(Tsuzaki J, Ueno A, et al. 第82回 日本医学放射線学会総会 2023年),現在論文投稿中である. さらに,肝細胞癌における脈管侵襲と強い関連を示す組織像である,vessels encapsulating tumor clusters(VETC) patternと,Gd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI)との関連についての検討も行い,VETC patternを有する肝細胞癌がEOB-MRI画像において,不均一性な信号を示す事を見いだし,こちらについても2024年度に学会発表を行うとともに,現在論文を投稿中である.
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