研究課題/領域番号 |
21K15392
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
高原 大志 愛知医科大学, 医学部, 助教 (50790317)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 淡明細胞型腎細胞癌 / TGF-β / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
淡明細胞型腎細胞癌158例の組織マイクロアレイを作成し、TGBF1遺伝子のRNA in situハイブリダイゼーションを行うことにより、組織におけるTGBF1の高発現は高い組織グレードと相関することを示した。また、TGBF1高発現は早期再発や腫瘍死と関連する予後不良因子でもあった。さらに原発巣と転移巣との比較により、転移巣ではTGBF1が高い発現を示したことも明らかにした。TGFB1の発現は、腫瘍免疫のみならず、転移においても重要な役割を担っていることが示唆された。 現在腎細胞癌の進行期の治療においては、免疫チェックポイント療法が重要な役割を示している。我々の研究ではTGBF1高発現症例では、PD-L1陽性細胞などの免疫抑制性の機能を持った細胞浸潤が高かった。一般的に腫瘍の微小環境におけるPD-L1陽性細胞が多い場合、免疫チェックポイント療法に奏功を示す傾向があると言われている。しかしながらその一方で、TGBF1遺伝子がコードするTGF-βは免疫チェックポイント療法に対する抵抗性を付与するとされているため、TGF-βを標的とする治療の有効性が期待される結果となった。 また、TGFB1シグナルが観察されたのは主に腫瘍細胞であった。淡明細胞型腎細胞癌におけるTGF-βの主たる産生源は炎症細胞ではなく、腫瘍細胞であることが示唆された。TGF-βの産生において、腫瘍の遺伝子異常などが関連する、内在性の機序の関与が疑われる結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コホート全体の1割強において、RNA in situハイブリダイゼーションが正常に行われなかった。これらはほとんどがpositive control probeも染色されない標本であり、検体の質が十分保たれていなかったと考えられる。しかしそれ以外に明らかな問題はなく、研究は計画に比べて、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究により、TGF-βの発現を評価する手法として、RNA in situハイブリダイゼーションは定量的に評価できる点、検体の質が担保されていれば、再現性をもって評価できる点などが確認できた。他のがん種の微小環境を評価するうえでも、有用なツールであると考えられる。今回のノウハウを利用して、淡明細胞型腎細胞以外にも、腫瘍の免疫学的な微小環境が腫瘍進展の重要な因子と考えられている膀胱がんにおいても、TGFB1の発現を評価することを計画している。また、次世代シークエンサーを用いた腫瘍の遺伝子解析とTGFB1の発現の関連、TGFB1の発現と免疫チェックポイント療法の奏功性の関係、TGFB1の阻害などが今後の研究テーマとして考えられるが、費用などの観点から、本研究課題の範疇を超えているため、異なる研究課題での実行を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に遅れが生じたため、また研究の第一段階として作成した組織マイクロアレイにより、試薬の節約が可能だったため。
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