研究実績の概要 |
この研究では、人工知能を活用した多数例の病理組織学的な形態解析を通じて、不均一な細胞集団である浸潤性膵管癌における新規形態学的分類法の構築と、それぞれの形態分類に対応する特異的な発現変化を示す遺伝子群を同定する。そして、推定される遺伝子変化を組織形態学へ効果的に翻訳し、腫瘍全体の不均一性の可視化を実現するとともに、予後や再発後の化学療法効果を予測するモデルを確立する。 令和3年度は浸潤性膵管癌674症例から5,280枚の組織標本をデジタル化し、事前に作製した癌画像の分類モデルにより4,362,186枚の癌画像を抽出した。このうち、癌の確率が90%以上の画像は1,081,981枚となった。癌以外の画像は1000万枚余りとなった。 腫瘍に含まれる各形態パターンから教師なし学習によりタイル画像のクラスタリングを行うにあたり、特徴量の抽出に使用するニューラルネットワークモデルの構築のため、先行研究での膵癌予後予測モデルと類似の予後予測精度が得られるか検証を行った。事前にデータをトレーニングデータと検証用データにランダム分割した。教師データとして、全生存、全再発、転移の有無を用い、様々な条件で最適な予後予測結果が得られるようにパラメータの調整を行った。その結果、再発有無を教師データとした場合の予後予測精度は、検証用データにおいてROC曲線下面積(AUC)で0.83程度と良好な結果が得られた。このモデルをベースとして、K-means法および新しいクラスタリング手法であるUMAP法を比較検討し形態パターンの分類法の確立を継続中である。
|