研究課題/領域番号 |
21K15393
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
高松 学 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 研究員 (00750366)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工知能 / 病理組織 / 画像解析 / 膵癌 |
研究実績の概要 |
この研究では、人工知能を活用した多数例の病理組織学的な形態解析を通じて、不均一な細胞集団である浸潤性膵管癌における新規形態学的分類法の構築と、それぞれの形態分類に対応する特異的な発現変化を示す遺伝子群を同定する。そして、推定される遺伝子変化を組織形態学へ効果的に翻訳し、腫瘍全体の不均一性の可視化を実現するとともに、予後や再発後の化学療法効果を予測するモデルを確立する。 令和3年度は浸潤性膵管癌674症例からデジタル化した組織画像を基に癌を含む小画像(パッチ画像)を100万枚余り収集し、特徴量の抽出から予後予測モデルを確立した。 令和4年度は、上記で収集した組織画像を基に、ニューラルネットワークを介したクラスタリングにより、不均一な癌画像を類似画像よりなる16クラスタに分解し、それぞれのクラスタの出現頻度を同定した。さらに予後に有意な影響を与えるクラスタを3つ同定した。特に、一定数以上存在すると膵癌術後再発が非常に高率となる、あるいは反対にその成分が存在しなければ5年無再発率50%以上となるような症例抽出に成功した。検証用データ130症例全体における再発率は85%程度であるため、予後良好群のリスク層別化は患者に正確な情報を提供し適切な補助療法の選択に繋げることができる。 上記のようなクラスタに属する組織におけるmRNAのパネル定量を実施することで、予後に影響を与える分子が同定できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和4年度に実施した画像のクラスタリングについて、比較的新しい症例(2020-2022年)を用いてRNA断片化の影響を避けるべく新たに組織画像のデジタル化を計画していたが、デジタルスライドスキャナの故障により計画が大幅に遅れている。 また、mRNA定量のためのnCOUNTER本体も故障中で修理依頼中であるが部品調達などの影響により復旧が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
故障中の上記機器が復旧次第、デジタル化、クラスタリング、RNA抽出、定量を行う予定であるが、デジタル化機器については同型別機での実施も検討中である。 mRNA定量結果を組織画像クラスタ毎に比較検討し、有意に発現変化のある遺伝子を同定し、免疫染色で可視化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施のために必要な試薬価格の高騰(約30%の上昇)により、症例数の再検討が必要となり、研究全体に遅れが生じ、試薬の調達が次年度となったため。 また機器故障の影響で、実際にRNA抽出に供する症例がどの程度になるか、まだ確定できないため、機器故障が復旧次第、RNA抽出症例数の確定と、試薬の購入を行う。
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