本年度は、昨年度に引き続き高悪性度消化器癌の代表である胆管癌・浸潤性膵管癌外科切除標本を用い、組織透明化法により、臓器特異的な浸潤、転移経路の解析を行った。胆管癌において、非腫瘍性粘膜と、上皮内癌組織、浸潤癌組織における、神経組織の三次元画像解析を行い比較検討した。非腫瘍と腫瘍の2群間の三次元神経画像をImageJ SNT 解析により比較検討したところ、非腫瘍領域と比較して、腫瘍領域において、神経長、分岐数ともに有意に増加していた。また、非腫瘍、上皮内癌、浸潤癌と癌が進展するにつれ、神経長、分岐ともに増加傾向を示した。癌の増生と神経新生は密接に関連しており、神経新生により癌の進展、転移に適した環境が形成されることが示唆された。浸潤性膵管癌において、癌の転移経路である、静脈に着目し、静脈の三次元画像解析を引き続き行った。特に本年度は、術前化学療法の有無、術前化学療法の効果による血管形態の変化に関して解析を行ったところ、術前化学療法施行症例では、腫瘍血管の血管長が減少し、表面積、体積が増加した。術前治療による組織学的治療効果判定を area of residual tumor score (ART score) で行い、術前治療による効果が低い症例と、高い症例で比較検討したところ、組織学的効果が低い症例に対して、高い症例では、腫瘍血管の血管長は減少し、表面積、体積、半径が増加していた。以上、化学療法による効果は腫瘍血管の形態と密接に関連していることが示唆された。
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